とある田舎町のカーニバルで眠り男チェザーレを見世物にする怪しい男ガリガリ博士。
フランシスは親友のアランと見物に出かけるが、翌日アランが何者かに殺害されてしまう。さらに町では連続殺人事件が起こり......。
世界初の長編ホラー映画とされることもある(諸説ある)、1919年のサイレント映画。
今から100余年前の映画で、さすがき画質が荒くてちょっと観るのがしんどかったけど、画質さえ抜けば今観ても全然面白くてびびります。
ストーリーは今観ればシンプルではあるんですが、100年前の映画だと舐めてかかっていると意外と凄いし、最後まで観終わってみれば伏線というか「そういうことか」みたいな気づきもいくつかあってよく出来ていると思います。
そして、観ていて目につくのは何といっても異様な街のセットなどの映像的な美しさ!
ドイツ表現主義の流れにある作品らしく、抽象的で遠近感も歪んだ絵に描かれた街のセットから主人公や街の人々の不安が空気中に漏れ出てきているようで、昨今の映画ではあまり味わえない濃密な妖しい雰囲気に酔えました。全てのシーンがひとつの絵画のようだし、特に眠り男を追って村の人たちが行進していくところなんか日常の向こう側へと足を踏み入れる感じがあってとても好き。
もちろん、チェザーレの登場シーンのおどろおどろしさ......彼が目を開く瞬間の恐ろしさ!......あるいはヒロインが攫われるシーンのスリリングさや、「CALIGARI」という文字が字幕ではなく映像の中でネオンのように踊る後半のあのシーンなど、印象的な映像が何度も観られて楽しいです。
眠り男チェザーレの予言と奇怪な連続殺人という筋立てはサイコスリラー的でありつつも、チェザーレの風体の恐ろしさなどは映画の「フランケンシュタイン」みたいなモンスターホラー的な側面もあり、雰囲気には怪奇幻想の趣もあり、ホラーの色んなサブジャンルの要素が詰まっているところもこの時代の作品としては凄えと思います。
「僕はあとどれくらい生きられる?」
「もうすぐ死ぬ。夜明けにはな!」
あとはネタバレでちょっとだけ書きます。