MasaichiYaguchi

猿ノ王国のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

猿ノ王国(2021年製作の映画)
3.7
接種に伴う副作用で取り沙汰されている「コロナワクチン」を題材に、藤井秀剛監督が、或るテレビ局で起きた隠蔽事件を社会の縮図になぞらえて描いたスリラーは、先読み出来ないスリル一杯に、今の忖度まみれで正義が置き去りにされた社会を突き破るかのように、衝撃的なラストへ向かって怒涛の如く展開していく。
コロナワクチンのニュース特集のオンエア日に、その特集内容が「大人の事情」で忖度され、担当者の意向を無視して無難なものにねじ曲げられようとしている。
映画では、そのことでテレビ局の25階の取締役員室と地下の編集室で、スリリングな同調圧力劇が繰り広げられていく。
忖度社会を象徴するかのように、映画では度々「見ざる聞かざる言わざる」が皮肉っぽく出てくる。
SNSが日常化して情報が溢れているように感じられるが、逆にそのことで真実が見えにくくなっていると思う。
今、それが如実に繰り広げられているのが「ロシアによるウクライナ侵攻」で、情報戦という側面もある大国による理不尽な所業は、ロシアと攻め込まれたウクライナが発信するニュースやSNSの内容の差違を見れば明らかで、不都合なことは、正に「見ざる聞かざる言わざる」を決め込まれている。
ストーリーの展開に連れ、25階の取締役員室と地下の編集室で繰り広げられている展開の関連性が徐々に明らかになり、本作が或る色合いを持ったドラマであることが分かってくる。
何とも皮肉めいた“落ち”が心に響きます。