むさじー

イル・ポスティーノのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

イル・ポスティーノ(1994年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<地中海の素朴な魂は言葉の海に誘われ詩人になった>

実在の詩人が亡命した史実に基づく物語ということだが、トルナトーレ『ニュー・シネマ・パラダイス』の展開に似ていると思った。
映画が唯一の娯楽という村に育った少年は、映写技師に出会い映画に魅了されて、後に映画監督になり、漁師の家に生まれたが仕事に馴染めなかった青年は、亡命してきた詩人に出会って“美しいもの”に目覚め、詩人になった。
老詩人と無名の青年の交流が淡々と描かれ、その詩の世界が配達員だった青年の人生を変えていく。
ただ、パブロは祖国を追われた亡命者の立場であり、マリオは集会の暴動で亡くなるという結末でありながら、二人の交流にのみ目が注がれて、二人の“詩人としての社会的活動”の部分がほとんど描かれていないので、それがドラマとして今一つ胸に響かない要素かと思える。
しかし、詩情豊かで美しい映画。
やや盛り上がりに欠ける気もするが、それがイタリア映画の趣の深さでもある。
むさじー

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