なお

野球部に花束をのなおのレビュー・感想・評価

野球部に花束を(2022年製作の映画)
3.8
"世界よ、これが高校野球だ"

この日は午後から映画館ハシゴを敢行。
まず1本目は予告映像の段階で気になっていたこちらから。

「三鷹東高校」という架空の高校の野球部を舞台に、未だ昭和の体育会系・熱血体質が残る野球部のヘンテコ文化や時代錯誤な部活動風景をコミカルに描く、青春群像劇(?)。

中学まで取り組んできた野球を捨て、高校デビューを夢見る主人公・黒田鉄平。
アットホームそうな雰囲気に惹かれまたも野球を始めることになる鉄平だったが、そこにはそっちの人にしか見えない部活動顧問・原田や、怖すぎて小沢仁志にしか見えない先輩からのパワハラ・モラハラの応酬が待っていた…

✏️栄冠は君に輝く
「野球部の1年生は基本、”奴隷”だ」
元千葉ロッテの名捕手・里崎智也氏が語る「野球部あるある」を交えつつ、基本コミカルに、時にセンチメンタルに、鉄平たちが「野球部構成員」として成長していく姿を描く。

私事ながら、自分も小中高と都合9年間野球部に所属していた。
幸い自分が所属していた野球部に、本作にて若干大げさにも描かれる時代錯誤な風習や習わし、今でも時折ニュースになるような暴力沙汰を働く先輩顧問は存在しなかったが、それでもやはり鉄平たちが身を持って体験することになる「文化」にはシンパシーというか、一種の懐かしさを感じてしまう。

なんで1年生のころの3年生ってあんなにも大きくて、そして怖く見えたんだろうな…
1年生の時は一部のうまいヤツを除いてグラウンドに立たせてもらうことなんかなくて、ひたすら走り込みと体力づくりやらされてたな…
1年生に部室なんか当然なくて、雨の日も風の日も三塁側のベンチで着替えとかしてたな…
そういえば自分、ヘタクソすぎて高校のころは公式戦一回も出られずに部活動を終えてしまったな…

と、思い返せば枚挙に暇がない当時のトンデモエピソードや思い出たちが胸に去来してきた。
そういった感覚を呼び起こさせてくれるという意味では、野球部の切ない心情を見事突くことに成功している、一風変わった青春ムービーと言えるかもしれない。

作品のコンセプトは「部活動あるある」に重きを置いているので、ドラマ部分の出来や俳優たちの演技力はかなり大味。
決して本作は「甲子園出場に向けひた走る若者たち」の活躍を描くものではないので、そのへんはご愛敬。

☑️まとめ
強豪校にいました!とか甲子園マジで目指してました!という人が見るよりも、野球部という特異な体質の部活にそれなりに揉まれて育ってきました!という人が見た方が共感を得やすいかも。

あくまで本作はフィクションであることを胸に、温かい目と心を持って鑑賞に臨むのが吉。

さてここで、雪が降る地方の学校限定だけど、私が思う「野球部あるある」をひとつ。

「冬の日の練習が雪で中止になって始まったサッカーで、全員練習以上に気合入りがち」

🎬2022年鑑賞数:96(38)
※カッコ内は劇場鑑賞数
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