ユーライ

かがみの孤城のユーライのレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
3.5
予告を見た時に、最近の画面密度の濃いTVシリーズと比較すると弱い、SAOには金かけてる癖によとか思っていたが、エンドロールを見ると原画に井上俊之と松本憲生がクレジットされているので驚かされる。異世界には行きつつも、飛んだり跳ねたりはせずに内面の問題をどう解決するかという物語であるから、細やかな日常の芝居に注力することになる。冒頭で「お腹が痛いから学校やすみたい」「本当に?」みたいな母娘のやり取りの後、母が頭を下げながら「うちの娘が……」と学校に電話、休みになったはずなのに軽くない足取りで自室への階段を上がる娘。こんなしょうもないくだりを長々と描き出す。家で弁当食べながらいいとも見たりしてる。鬱屈青春を扱う手付きとして申し分はないと期待させるが、しかし集まった子供達がどいつもこいつも良い子過ぎる。物分かりが良過ぎる。お前らもっと流血沙汰とかしろよ『バトル・ロワイアル』みたいにさぁ……。これはあながち極端な見方とも思えず、一番生を感じられたのは太っちょの嬉野君だ。彼は道化を演じながら、明らかに性を意識している。太っちょで性に積極的という小奇麗ではない、おおよそキラキラしたフィクションからは排除されがちな人物をちゃんと捉えているだけでも喜ばしい。でも、オオカミサマは誰なんだとかいったミステリーは全部どうでもいいんだよな。実は歳の差があったとかあの人はあの子だとか全部必要無いと思う。もっと直球で鬱屈青春をやり遂げてもらいたかった。『オトナ帝国』を連想させずにはいられない階段ダッシュも比較にならない程エモーションが足りず、『バースデー・ワンダーランド』よりは腑に落ちるといった程度だが、ラストショットの慎ましさは流石。あとリーダー的存在であるアキさん、この子露出多いわよとドキドキしていると、後半になってそういう邪な心を見透かされたような展開になるのでごめんなさいとなるのだが、親戚の男(叔父かはたまた実父か)が生足を舐めるように見る主観ショットのひたすら気持ち悪い感じ、原恵一流の深夜アニメ的表現への抗議なのかも知れないと思ったね。
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