Ricola

エドワールとキャロリーヌのRicolaのレビュー・感想・評価

エドワールとキャロリーヌ(1951年製作の映画)
4.6
若い夫婦の喧嘩についての話でそれだけといえばそうなのだが、小道具の効いた細やかなところまで豊かな描写と心の機微が繊細に描かれており、これをフランス映画史上傑作の一つだと言う人が多くいることにとっても納得だった。

脚本の担当が女性ということもあり、女性側の心の動きも丁寧に的確に描かれているのが印象的。


そこにはもちろん、男女での考え方の違いだったりが影響してくるわけだが。
この主人公の二人がそもそもタイプが違くて、夫エドワールは神経質なピアニスト、妻キャロリーヌは天真爛漫なお嬢様なのである。

そもそも彼らがうまくいっていたカップルだったのかも最初の頃は疑問に感じるほど、彼らの関係のギクシャク感にハラハラさせられるが、それぞれの表情などから時に安心感をおぼえることもある。

陽気な音楽をかけながらパーティー用のドレスを選ぶキャロリーヌ。それに対して、自分の苦手な妻の親戚の主催するパーティーでピアノを弾くという大役に緊張している。
彼がピリピリしているのに、妻は呑気に流行のドレスを見繕おうとし彼に意見を聞く。どんどん噛み合わなくなってくる二人の喧嘩の様子がリアル。

夫の唯一持っていたベストを間違えて妻が捨てたなんて、本当に夫婦あるあるな気がする笑
そして妻は夫のためをと思ってこっそり電話して夫の苦手な妻のいとこに助けを頼むのである。電話線を引っ張って管理人さんたちの足元に引っ掛かるところとかの描写なんてさり気ないけれど、それで妻キャロリーヌの怪しい行動の意味が夫にまで自然に伝わることがわかる。

そして彼らの世界以外に重要なのが、上流階級のパーティーでの人々の様子である。
この群像劇とも言える描写と上流階級への皮肉は、ルノワールの「ゲームの規則」みたい。
彼らの上っ面だけのやり取りや、それによって時に生み出される微妙な空気感など、作られたもののように思えなくてなんだかソワソワする。

そんな中浮いているエドワールと、彼の思いがけぬ救世主こそベッケル的な古典的ハリウッド映画要素を感じる。

パーティーの際に互いに気になって仕方ない夫婦の表情や視線、そして他者のそれの介入といった、入り込んだしかしわかりにくいことはない繊細で巧みな心理描写の上品さはさすが!

さらりと交わすようで、深いところまで浮かび上がらせるさり気ない描写や美しいカメラワークとピアノ音楽の融合が見事で、これまた大のお気に入り作品の一つとなった。
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