jonajona

グッバイ・クルエル・ワールドのjonajonaのレビュー・感想・評価

3.5
クルエル、ってなに?と思って調べたらむごい、非情な、て意味らしい。狂える、とかけてる造語かなぁと思ってたら英語だったのね。

ヤクザの資金洗浄現場(ラブホテル)を襲撃し大金を得た互いに素性を知らないその場限りの強盗集団。激怒したヤクザ組織は汚職刑事を雇い捜査を始めるが、刑事の提案により実際の強奪金より多く金が盗まれたという噂を流すことで彼らの仲間割れを目論む。各人の日常に戻った強盗犯たちは盗んだ金で人生の一発逆転を目指すが、徐々にその噂が波及し疑心暗鬼となりついに目論見通りの潰し合いが始まるのだった…。
というのを予想したのだが、最後の二文くらいは割と『そうしようと思ってたが撮ってみたら違うものになっちゃった』て感じでブレブレになってる印象。もう少しわかりやすい構成にしたら楽しい映画だったろうと思う。

あと銃をこんだけ撃ち合う邦画はやはりリアルさはなく寓話的に見えてしまう。

奥野瑛太のヤクザから足を洗い切れない滲み出る野良犬臭がする演技がすごかった。元ヤクザ西島秀俊の男の負の側面が形を持って現れた感。

ポップかというと序盤以降は割とシリアスで低めのテンションで進行していくので印象は違う。過激ではあると思うがポップさを期待すると裏切られる。偏見ではあるが、この位のトーンを落としてビビッドさを出した色味のポスターの邦画犯罪劇は大概テンションが低く軽妙さに欠ける印象がある。
確かにクズ同士の潰し合いではあるのだが景気良く意表ついた殺し合いがあるわけでもなく、なんならヤクザに捕まって命令されて他のメンバーを殺害しに行くので個人的な疑心暗鬼の感情で行ってる風では無い。システマチックなのだ。こちらとしては大金が手元にあるのにさらに欲を掻き疑心暗鬼に陥る人の醜さが見れるのを期待したいし、若者が虐げられる格差社会に疑義を唱えるにしても彼らが何とかヤクザを返り討ちにしようと企む等下剋上の展開にしたりやりようはあったのでは無いか。キャッチのイメージとは異なってると個人的には思う。

ルックは充分整ってる部類だと思うのだがもう少しユーモアがあっても良いのではないか、ちょっと勿体無い。
会話劇がもうすこし笑えてトーンが少し軽妙に感じられたら面白かった気がする。シリアスな路線でシュールで笑える『ブルータルジャスティス』が理想形として近いイメージではないか。あまりに真面目で少し説教くさいのが難点に感じた。

大森監督の映画は興味をそそられるものも多いしエンタメの形で社会問題を提起したいという志も立派だと思うのだけど、結構出だしのヒキの強さに対して要点がはっきりしないものが多く要素が終盤に散らばってしまってる、あるいは陰鬱なまま何かの『解』を得られずにおわるケースが多いなと感じる。
これがもうすこし未来に希望が持てるものか絶望の極地を見せるものになれば見心地もいいと思うのだが…

やるせねぇよな…と愚痴をきいてるような気分になる。わかるんだけどな。
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