しゅう

さかなのこのしゅうのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
4.4
正直さかなクンが苦手だった。

専門教育を受けていないにもかかわらず、市井の愛好家として研究・観察を続けて遂には専門家も認める成果を挙げた努力と情熱には感心しつつも、さかなクン独特のあの言動がメディア受けを狙った"装われた奇人感"に見えてなんだかなぁと思っていた。

だがこの映画を観ると、アレは世間の"普通"からどうしてもズレてしまうさかなクンが、それでも自分の"好き"の為に世の中と対峙するにあたっての一種の鎧なのだと感じる。

今まで世の中の"普通"とちょっとズレてしまう人々を厳しくも優しい視線で描いてきた沖田監督だが、さかなクンのズレっぷりは半端じゃない。

この主人公を演じるのが、のん。

『片隅』の時もそうだったが、この映画を観た後ではさかなクンを演じられるのは彼女以外に考えられないハマリ役。自分の"好き"に一心不乱に打ち込む楽しさとある種の異様さ、それ故に世間と折り合いを付けられない苦しさと孤独を文字通り体現していた。

この映画を観たら、私のように偏見を抱いていた人達もさかなクンを見直すに違いない。

あと、パンフレットにもの凄い力が入っていて見応え読み応え充分なので、映画が気に入った人は是非買った方が良いと思う。

追記

2023年2月12日、「さかなクンの一魚一会」読了。改めてさかなクンは素晴らしい知性の持ち主だと感心させられると共に、映画オリジナルの展開に沖田監督の作家性を改めて感じた。
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