ザリくん

さかなのこのザリくんのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
4.1
とにかく優しい映画です。🐙以外には。

この沖田監督(と共同脚本の前田さん)の紡ぐ世界観は本当に好き。
今回もほっこりしながら泣いてしまった。

ミー坊a.k.a.さかなクンの役はのんさんしか出来ないでしょう。のんさんの澄んだ役柄はまさに"少年"(社会通念上、少年は男女を問わない)であり、性別の垣根を超えることに何の違和感もない。
だから最初に「男か女かはどっちでもいい」と出た時にちょっと「そりゃあその通り」と「観客を信じて…」と「製作委員会に書かされてないかな…」が混じった複雑な気持ちが少々あったかも。
そんな難癖こそどうでも良くて、脇を固める俳優達も柳楽優弥を始めとして素晴らしい布陣で、主題歌のCHAIに至るまで世界観を形作る上で完璧だったのでは。
("例のおじさん"に関してはのちほど言及…)

ネガティブな展開が予期できる事象が起こると中略カットが入り、映画の雰囲気を壊さずかつ観客を信頼してる姿勢が見えるシーン演出が良かった。(さっきは観客信じてないと書いてごめんなさい)

暗い場所が黒潰れしていたりカメラのピントが合ってない箇所がいくつかあったからフィルムで撮ったのかな? 変な今どきっぽさが削がれてより温かい印象になったので個人的には好き。
(追記 16mmフィルム撮影らしいです。幻想的な雰囲気の映像で良かったですね)


以下ネタバレ注意

ギョギョおじさんなる可愛らしい不審者が登場した時は、過去干渉ループ能力を手に入れた無職さかなクンが少年を"実在の"さかなクンに身を賭して仕立て上げるSFか?と思ったが後半の展開を見たら勘違いだった。
この帽子を お前に預ける 安いもんだ 前科のひとつくらい (ドン!)

ギョギョおじさん結局逮捕されて無職のままだったけど、最後は幸せそうにホームレス仲間と一緒に笑顔になってたから、まあ、良かった…
監督のインタビュー読むと、「あれはたまたま才能を認知されなかった世界線のさかなクン」のようなことが書かれており(意訳)、表の世界以外もしっかりと描写し、かつコメディとして成り立っているのが面白いな〜と思った。

前半、父親は本当にミー坊を心配している様子で怒っていて、母親は貼り付けたような口調で肯定の言葉を吐いているのが違和感があったが終盤で理由が判明するの良かった。
ともすれば「子供の行動を全て肯定するのが良い親に決まっている」と捉えられかねない危うさをしっかりカバーしている。それでいて家族愛の素晴らしさに水を差すことには全然なっていないから凄い! そんな感じで嫌な人間というものが1人も出てこない。

これからもNHKの「ギョギョっとサカナ☆スター」は視聴し続けます。

余談に
映画館の帰りにチャリで無理な2人乗り運転をして車道を暴走する高校生達を見掛けたが(ダメだけど)劇中のヤンキーを想起しニコニコしながら見てしまった。
ザリくん

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