ザリくん

市子のザリくんのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.3
杉咲花の黒目が大きな眼、顔を覆う黒い髪、身体を覆う黒い服。
アイデンティティの喪失と回復を繰り返すそのブラックボックスにより、現代法治国家の隙間を映すと共に、一筋の(本当に僅かだけ)人間賛歌も残しているように思えた。


記憶に新しい「さがす」や「怪物」を彷彿とさせるストーリーテリングで進んでいく。主人公の存在感・実在感が大きいのに同時に群像劇であるところが舞台畑の面白さを感じる。

至る所で演出される流水が人間の不安定や美しさ残酷さ、無常な世の中を表しているよう。ここ一昔前からニュースで聞くようになったタイムリーな社会問題を扱っているが(その他カメラワークなど)映画的演出で普遍的なものになっている。

ミスリードに何回も引っかかったが見せ所である2回目の涙が1番印象に残った。金麦飲むところは切り取って(全部流れてしまえというセリフと共に)不穏なビールCMにすべき。

エンドロールで流れるあの音声もストーリーの1部になっていると解釈したが他の人は書いていない…
ネタバレなしで見て欲しい今年邦画ベストワン候補の逸作です。2回目見たらちゃんと掘り下げて書きます。
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