メランクさん

さかなのこのメランクさんのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
5.0
【8月毎日映画シリーズ 8日目】

沖田修一の近作がどれもしっくりこなくて、
特に笑わせてくるところが笑えなかったりして、
そこにさかなクンというなかなか難しそうな対象を持ってきて、
いい評判も聞いてはいたけど映画館はスルーだったなぁ。

さかなクンの自伝を原作としつつものんを主人公にして、
やっぱりなかなか一筋縄ではいかない内容。
ってかさかなクン重要な役で出てくるし。
ヤンキーが戯れる辺りはなかなか根気がいりました。

とは言えミー坊がさかなクンになるためには持って生まれた特性というのが大きく、
母親の尋常じゃない寛容さというのがあり、
それでも実際に社会に出てくときにぶち当たる壁を
彼だからこそなしてたコミュ力によって打開してく。
特に最後の部分に本作はフォーカス当ててるし、
個人的にも痺れるなぁと思った。

そっか、結局かなり横道世之介に近い話になってて、
世之介がゲイや高級娼婦やお金持ちってステータスに構わずに人と繋がってったように、
ミー坊もヤンキーや変なおじさんと繋がってく。
世之介にも感じてたことだけど、
私は人をステータスでしか見てこなかったし、
そのことが人生を本当に味気ないものにしてきたように感じています。

誰でも寄りつく安全な人のそばにいればそりゃ平穏に暮らせる。
でもミー坊は「普通がわからない」から
そのときそのときの自分の感覚で生きるしかない。
それが生きにくさでもあり、さかなクンに繋がる道でもある。

だからけっこう泣けるのが夏帆のとこ。
「普通がわからない」と言ってはみたものの
自分のいまを客観視した結果、生き方を変えようとしてみる。
でもそれを悟った夏帆が去ってくんだよなぁ。

って書いてたら、やっぱこういうの描く沖田修一好きだな〜と思う。
大好きな横道世之介も長いのが欠点だと思ってて、
それは今作ももうちょいなんとかなんないか?とは思うんだけど。
くどい、あざとい笑いも笑っちゃうしなぁ。