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柳川のhonobonのレビュー・感想・評価

柳川(2021年製作の映画)
4.0
柳川と書いて、

柳川の静かな景観と同じように静かな佇まいの作品かと思ったらいやいや雰囲気が若干違う。

『生きる』を見た後だと同じような感覚を持ち、カズオ・イシグロの名が出てビックリする。
そして、みんな歌うし、踊る。ヴェニスのようなゴーストタウンと揶揄されながらもこの運河のある街は心は豊かだ。

柳川に流れる水流のように静かにゆっくりと流れるせせらぎはとても心地の良い恋模様。
そして、柳川という土地で中国語、日本語、そして英語の3言語が交錯し'通訳'では伝わらない部分を'字幕'では補完できてしまう。
この物語を見ている観客は補完できても、登場人物たちは言葉の最後までは伝わっていない。それは記憶を思い返すことと同じように伝えてくる。
それはチュアンと堀留の女将さんとの思い出話のように言葉は通じ合わなくてもどんな話をしているかがわかるかのように心の中は通じ合っていたのかもしれないと予感させてくれる。

ニー・ニーさんって『バーニング・ダウン』の!あぁそうか。とても存在感のある役者さん。ごちゃごちゃした恋模様を丁寧に解き、新たな結び目を作るその姿が美しい。

夜のシーンが多かったところを見ると、フィルムコミッションの人たちや柳川の人たちの協力は甚大だっただろうなと思わず想像してしまう。
水面の反射で二人を映し出すシーンは幻想的で

かつてその景観がなくなる寸前だったとは想像がつかない柳川の景色を見てそれだけでもうっとりするし、いつかは行ってみたい場所になった。
むしろ…というのはほんの小さな粒として残しておこう。
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