味噌のカツオ

線は、僕を描くの味噌のカツオのレビュー・感想・評価

線は、僕を描く(2022年製作の映画)
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『ちはやふる』シリーズ以来となる小泉徳宏監督作品。
またなんか“和”をベースとした作品だね~なんて思いつつ。

スポ根チックなバトルが見せ場だった「ちはやふる」とは違って、あくまで“己と向き合う”ことが求められる世界であるかと。
それもあってか、今作は上映時間 107分と、意外とコンパクト。普通に見やすいですし、作品としても良かったと思います。

主演は『流浪の月』でゲスい役柄を演じたがためにファンが減ったというウワサの横浜流星。
どうしてもチャラいイケメンっぽく見えてしまうところはありますが、迷える若者を好演。
そして千瑛役の清原果耶はいつ見ても“芯”を感じさせる芝居しますね。

また三浦友和さんが演じた篠田湖山は、芸術に携わってきた“先生”という趣とは違い、飄々とした振る舞いが面白かったり、その語り口に引き込まれました。

もう一人 気になったのが江口洋介さんで。
前半は優しい兄貴分だったのが、突如筆を執って描き出すんだけど。その際の表情が嬉々としていて。
そんな気分で描いたなら、そりゃ躍動感が出るでしょうよと。そういう意味での説得力ありました。

実は悲しい過去を背負ったままで、前に進めないでいる大学生の霜介。そして表面上の評価を受けながらもスランプに陥っている千瑛、それぞれの成長譚という面はあるのですが。
映画としては、二人がどこに辿り着くかよりも、霜介の過去の描写のほうがヤマ場になってしまったようで。

「線は、僕を描く」というタイトル。主人公が線を描くのではなく、描かれた線こそが自分自身であるという印象を持ちました。
もちろんそうしたテーマも表現されてはおりますし、一本の映画として、起承転結がちゃんとできていると思います。

ただ、人が死ぬとか、誰かが病気になるというような 引っ張り方が日本の創作に多すぎるなと。そうした受け止め方が先立っちゃうと、ちょっともったいないような気もしました。
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