巴里得撤

非常宣言の巴里得撤のレビュー・感想・評価

非常宣言(2020年製作の映画)
3.0
「航空機内でバイオテロ」とか、「新幹線でゾンビ」に匹敵するヤバさ。逃げ場がないのは航空機の方か。ウイルスは目に見えないのもイヤだ。


映画としての完成度はかなり高い。ウイルスが徐々に乗客を蝕んでいく様子や、操縦不能に陥ったときの機内の描写はリアルかつ迫力満点。映画館で観た甲斐があった。


そして、主人公2人、ソン・ガンホ演じる刑事と、イ・ビョンホン演じる元パイロットのそれぞれにしっかりとドラマがあって、見ごたえ十分。ソ・ガンホは妻への愛ゆえに「自己犠牲」を厭わない。そして、イ・ビョンホンには、「贖罪と再生」のドラマが待っている。

そりゃ、感情移入してしまうでしょう。


一方で、社会的な反応や韓国、日米政府の対応などは、「いやー、そりゃないっすよ」という印象。

我が国の政府は確かにアレだけど、民間機にアレするほどアレではないでしょう。

韓国の国交相の出しゃばりっぷりにも違和感があった。管轄外のことにもガシガシ顔出すし。


一番怖かったのは、韓国国内の大衆心理。「致死率40%のウイルスを国内に入れるな!!」
あっと言う間にデモを組織する行動力はすごいけど、そりゃないぜ。

航空機の乗客の「自己犠牲」は世論に強いられたもので、美談でもなんでもない。「そこに人間としての尊厳がー」などとは思えない。あきらめたらあかん。

生き抜くことこそが尊いことを、ソン・ガンホの演じる刑事が体現している。希望を捨てずに足掻き続けるのが人間なんだ。
巴里得撤

巴里得撤