藍紺

ザリガニの鳴くところの藍紺のレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
3.8
カイアの紡ぐ話し言葉がとても魅力的だった。詩的な表現が多くて、思わず書きとめたくなるセンテンスの数々……。通り一辺倒の教育を受けていないから他者とかぶらない言葉の使い方になるのかな? 初めてやぐらの上に登って湿地帯を見た時につぶやく感想とか、裁判所で判決を受ける際に担当弁護士に放つ言葉とか、いちいち胸に刺さる表現が多くて何度もグッときた。

幼いころから暴力を受け、家族に捨てられ、社会からは疎まれ、孤独の中たった1人で生きてきた彼女(町の雑貨店夫婦は良き理解者だったが)にとっては唯一“自然”が生きる術を教えてくれた親のような存在だったことは想像出来る。そして彼女は湿地そのものだったんだなと。暗くて狭くて誰にも侵入を許さない深淵とした湿地。彼女を愛したテイトでさえも彼女を本当の意味で理解は出来ないのだと思う。ただそのことは悲しいことではなく良い意味で、人間の複雑さを見せてもらった気がした。

エンドロールで流れるテイラー・スウィフトの曲「Carolina」が映画そのものでしたね。心に沁みいる素敵な曲でした。
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