滝井椎野

ザリガニの鳴くところの滝井椎野のネタバレレビュー・内容・結末

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

湿地の美しさと暗さを描く上質なミステリ。

人の心に巣くう暗闇が暴かれる法廷でのシーンが面白く、少しずつ丁寧に積み重ねられていく情報の一つ一つが観ているこちらを作品の中へと引き込んでいく。
そして裁判の最後、主人公カイアの半生を追体験した我々に呼びかける老弁護士の演説がかなり心に刺さる。

正直、カイアは事件の容疑者としてかなり怪しいのだが、法廷でのやり取りをみている内にどんどん彼女の無罪を信じるようになる。これが実に上手い。そこからのあのラストである。まんまとしてやられた。
とはいえ、最後まで彼女と共に湿地での生活を過ごす内に、カイアに善悪の区別はなく、生きるための行為だったというのが理解できるようになる。作中でのカイアは湿地そのものであるという言葉が全てを表している訳だが、それ以外にも最初から最後までこの作品の本質を表すような言葉が散りばめられており、意識しながら再鑑賞するのも面白いかもしれない。

湿地の美しさと暗さにすっかり魅了される素晴らしい作品だった。
滝井椎野

滝井椎野