MM65

ザリガニの鳴くところのMM65のネタバレレビュー・内容・結末

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

最後、無罪と告げられたシーンからが怖くて、え、待って待ってチェイス君の死の真相は??事故だったん???って混乱してる間に幸せな(わざとらしい、仮初のようにすら思える)カイアの余生が怒涛の如く流れて、えー待って待ってと置き去りになってるうちに、スッと示唆される冷ややかな真実。そこにかぶさるテイラースウィフトの「あなたはわたしを見ていない」という冷めた歌声。肝が冷えた。

真実は存在しない、解釈があるだけという哲学者の言葉を思い出す。誰もが自分の見たいようにしか人を見ないし、裁かない。チェイスの「誰も本当の俺を知らない」という言葉は、実はカイアにもオーバーラップする。貝殻の首飾りを彼女が捨てずに持っていたように、彼女の心の奥に居座っていたのは、ずっとチェイスだったのかも知れない。彼女は彼を湿地に還したし、彼女もそこに還っていく。
思えば「生き物に善悪はないのかも」という言葉や、「わたしは何も言わない。彼らに自分自身を裁かせる」という言葉の端々に、カイアの生命感のようなものが見え隠れしている気もする。何もかもがただ、生存のための行為だった。

最終的に湿地だけが彼女たちの孤独を溶かしてくれる、最初で最後の友人であり、ホームだったのだと思う。
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