MM65

アメリカン・フィクションのMM65のネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

当事者が感じている生々しい差別の現実というのは、そこで生きていない者からするとどうしても遠く感じてしまい手触り感がない。例えば冒頭、主人公をすっとばして白人の客の方に停まるタクシー。アカデミー賞授賞式でも話題になったが、こういうマイクロアグレッションが空気のように存在しているのだろう。

白人は免罪符が欲しいだけ、というセリフや、あなたが白人じゃなくて良かった、というセリフにドキッとした。
家族の問題も恋人とのいざこざも、仕事の悩みも、肌の色に関係なく皆に降りかかることだし、そういう意味でも人類は皆同じだと思うけど、もし私がアメリカで生きる在米日本人、あるいは日本人の親を持つアメリカ人だったら、きっと私の書く本は「アジア系アメリカ人著者」の欄に並べられてしまうんだろうな。冒頭の授業のシーンで「作品について語れ」と怒鳴る主人公のフラストレーションは想像に難くないし、あのシーンに彼の言いたいこと全部詰まってる気がする。


と、根底に流れるのは重いテーマだけど、一本の映画として凄く面白く仕上がっていたのが軽やかでよかった。ラスト、映画の結末について話し合うシーンは、ストーリーオブマイライフのラストシーンを思わせるものもあった。どちらもマイノリティが自分の物語をしたたかに使う。物語の結末を書き換えても、信念は曲げていないのだ。
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