ノラネコの呑んで観るシネマ

ソウルの春のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ソウルの春(2023年製作の映画)
4.8
朴正煕大統領暗殺直後、軍内部の秘密組織ハナ会が権力を掌握した、いわゆる“粛軍クーデター”が起こった1979年12月12日の一夜を描く、むちゃくちゃ面白い歴史ドラマ。
史実をもとにしたフィクションとうたっているが、事態の流れはほぼ史実通りで、盛ってる部分も知る限り少ない。
ドラマの軸となるのは、ファン・ジョンミンが怪演するクーデターの首謀者で後の大統領チョン・ドゥグァンと、チョン・ウソン演じる首都警備司令官のイ・テシンの、軍人としても人間としても全く対照的な二人なのだが、最終的にクーデターが成功したことは誰でも知っている事実。
いったいどうやって映画的に盛り上げるのか?と思ったが、イ・テシンを中心とした軍とハナ会側の反乱軍、両者の有利不利の潮目が目まぐるしく入れ替わる。
基本史実なので不謹慎かも知れないが、これはまさしく首都ソウルを舞台としたボードゲームだ。
劇中でもチョン・ドゥグァンがクーデター計画を碁に例える描写があるが、個人的には同じ軍という組織に裏表があるあたり、オセロゲームを連想してしまった。
ハナ会は軍内部にあちこちに浸透していて、誰がハナ会の手下なのか、どちらが先に配下の戦闘部隊をソウルに入れるか、行方不明の国防部長官の身柄はどこにあるのか、幾つもの要素が複雑に絡み合い、一時も弛緩する時間がない。
面白い映画は何度観ても面白いように、国の支配を巡るグレートゲームは、結末が分かっていても面白いのである。
この時代を舞台とした作品に必ず出てくるチョン・ドゥファン(本作ではドゥグァン)元大統領、ほとんどの作品で特に政治的ビジョンも無く、権力が欲しいだけのずる賢い小物というキャラクターが変わらないのだよな。
現代史の人物だから、とことん研究され尽くされているのだろう。
因果応報と言えばそれまでだが、かつて自分が支配した国でこんな風に描かれること、本人はどう思っていたのだろう。
ブログ記事:ソウルの春・・・・・評価額1750円
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