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スーパーヒーローズのakrutmのレビュー・感想・評価

スーパーヒーローズ(2021年製作の映画)
4.5
漫画家の女性アンナと大学教員の男性マルコの20年間に渡る波乱に満ちた恋愛関係を、二人が出会ってからの前半10年間と後半の10年間の二つの期間を並行して描いた、パオロ・ジェノベーゼ監督による恋愛ドラマ映画。

大ヒット作『おとなの事情』(個人的にはこの邦題は好きではない)のコメディとは異なり、コメディタッチではありながらも直球の恋愛映画になっている。特に優れているのがその描き方。複数の時間を行き来しながら描くというだけならばそれほど珍しくはないが、それらが呼応し合って二人の関係の深さが徐々に明らかになっていくという、ある意味で時系列を素直に描くのと同じような効果が得られている点が素晴らしい。でも注意して見ていないとどちらの時代のシーンなのかがわからなくなってしまう点は、ちょっと疲れるかも。マルコのヒゲの長さとアンナの髪型で判別しよう。

お互いに惹かれ合いながらも、子供を欲しがる男性に対して子供が欲しがらない女性という価値観の不一致からすれ違いが生じていくという苦しい恋愛の末に迎える結末が、彼女の判断がちょっとどうかと思うところもなくはないが、印象的という言葉で語れないほど印象的なのも、本映画を珠玉の作品にしている理由である。ラストに呼応するタイトルもグッド。さらに、洒落た人工的な照明によるルミナスな室内と燦々と輝く太陽光によるサニーな屋外の対比という、映像の美的感覚も素晴らしくて好みである。

そして何と言っても素敵過ぎるのが、アンナを演じたジャスミン・トリンカ。こんな難しい役もこなせるようになったのかと思うと感慨深い。もはやイタリアを代表する女優と言っても過言ではないだろう。
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