異形と腐敗をテーマに、交通事故で妻を失った双子の動物学者とその事故で生き残った女性を描いた、ピーター・グリーナウェイ監督のアート映画。グリーナウェイ作品に欠かせない撮影監督のサッシャ・ヴィエルニ(それ以前はアラン・レネとのコンビが有名)との初コラボとなる長編第2作目の作品。
動物園で働く双子の動物学者が白鳥との衝突事故でお互いの妻を亡くし、同乗していた女性は片足を切断することになってしまう。妻の死が受け入れられない二人は、妻の死体がどうなるのかを考えるうちに動物が腐敗する姿に取り憑かれるとともに、女性との関係を結ぶようになる...という大まかなプロットはあるものの、ほぼストーリーテリングは意図されておらず、芸術性を追求した映像で魅せることを狙った作品といえる。ピーター・グリーナウェイ監督の作品は初鑑賞だけれど、おそらく他の作品もそうなのだろう。
こういう作品は結構好きなほうなのだが、本作はあまりピンとこなかった。色使いが特徴的で、夜に青く光るZOOという文字看板の前で犬をリードで引っ張る少年少女という冒頭のシーンのようなセンスは好きだけど、わりとサイケデリックな色の使い方をしているのは人工的な匂いが強すぎて好きになれない。本作の売りとも言える動物の腐敗映像もどこかインパクトに欠ける。あっ、でも音楽は良かった。
フェルメールの絵画が小道具に使われたりフェルメールへの言及が少なくないが、映画監督になる前の若い頃は画家を目指していたピーター・グリーナウェイ監督の好みなのだろうか。そういう背景もあってか、本作のテーマは「美」を規定する重要な性質としての対称性・完全性への憧憬、および対称性・完全性の崩壊への抵抗である。脚の切断、結合双生児などなど完全性を欠く異形(ここに差別的な意味はまったく含んでいない)や完全性が失われる腐敗を徹底的に描きながら、登場人物たちはそれらに激しく抵抗しようとして、最終的にラストで描かれるような決断をするのである。それが興味深いかどうかは別にして、芸術性の観点から価値のある作品と言えるだろう。
それにしても、ちんこ出し過ぎ。