化粧品会社が主催するミス・コンテストのミネソタ州地区予選を、取材クルーが撮影したドキュメンタリー映像という形式で描いた、マイケル・パトリック・ジャン監督の長編デビュー作となるブラック・コメディ映画。TVプロデューサーで脚本家のローナ・ウィリアムズが自らのミスコン経験を元にして書き上げた脚本の映画化であり、ローナ・ウィリアムズ自身も地味な審査員役として出演している。
ミス・コンテストに参加する女性たちや運営するスタッフ、そしてミスコンそのものの滑稽さが、徹頭徹尾面白おかしく、ときには茶化して描いている。ミスコンそのものを批判するという意図はないので、頭の中を空にしてコメディとして素直に楽しむのが正しい鑑賞方法だろう。太鼓判を押せるほどの出来とは言えないが、そんなに悪くはない。いや、結構好きかも。興行的には成功しなかったが、その後、徐々にカルト的な人気を博したらしい。
ミスコンの参加者で対抗馬のアンバーを演じているキルスティン・ダンスト、本命のベッキーを演じるデニス・リチャーズ(実年齢は30歳間近なのにティーンの役を演じているのが凄い)をはじめ、エレン・バーキン、カースティ・アレイ、アリソン・ジャネイなど、出演している女優たちは、地味に豪華。ミネソタの田舎町のミスコン予選ということで、ミスコン参加者みんなをどこか芋っぽく映しているのがリアルで面白い。出演者の中で最もインパクトがあるのは、アンバーの母親の友人役のアリソン・ジャネイ。彼女自身もインタビューの中で、この映画の役が大好きだったと言ってくれる人が一番多いと語っている。
また、この映画を見ていると、まだポリコレという概念もなかった当時の、ある意味での大らかさを楽しむこともできるように感じる。例えば、日系アメリカ人夫婦の養女となったミスコン出演者の女性が、きのこ雲を模った被り物をして原子力がアメリカの誇りと発言するという、今ではまずありえないシーンが出てくる。映画全体を見れば明らかなように、そこには差別的な意図はまったくなく、逆にミスコンをディスるためのネタとしてポジティブに利用されているとも解釈できる。差別を少しでも助長するような表現や扱いを避けるべきであることは言うまでもないが、この程度のことは笑い飛ばして終わるくらいの大らかさが、昨今の世界的な傾向である分断社会には必要なのかもしれない。
・印象に残った点 --- キルスティン・ダンストの遺体メイクのバイト、エレン・バーキンのビール缶と一体になった右手、アリソン・ジャネイの芋派手ファッション。
・日系アメリカ人夫婦の子供として、松田聖子が脈絡なく出てくるのがびっくり。1990年頃に成功しなかった海外進出に再度挑戦していた時期なので、そのための宣伝出演というところか。
・日本語のタイトルが本当に意味不明。映画を見たらこんなタイトルは付けられないし、映画を見なくてもこんなタイトルは付けられない。ちなみに、原題の『Drop Dead Gorgeous』は、当時の俗語で訳すと「激マブ」(今は死語?)というような意味。