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ゴッドファーザーのakrutmのレビュー・感想・評価

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)
4.5
イタリア系マフィア「コルレオーネ・ファミリー」のドンであるヴィトー・コルレオーネと三男のマイケル・コルレオーネを中心に、マフィアどうしの抗争や家族の絆を描いた、フランシス・フォード・コッポラ監督の犯罪ドラマ映画。原作はイタリア系アメリカ人作家であるマリオ・プーゾによる同名小説で、本作では監督とともに脚本も担当している。

マフィア映画と聞いて苦手なジャンルかもしれないと思っていたこともあり、今まで特に見ようとは思わなかったが、どんな映画批評やランキングでも評価が高い超名作なので今更ながら鑑賞したところ、世間で評価されているとおりの素晴らしい作品であることが実感できた。まず、マフィア一家が題材になっているがマフィア映画ではなく家族愛を描いているという点だけで、個人的にはかなりの好印象。

そして、映画全体を通じての演出・ミザンセーヌが素晴らしい。フィルム・ノワールを思わせるような陰影に満ちた映像によるシーンと、晴天の屋外での娘の結婚式というフィルム・ノワールの対極にあるシーンを交互に提示することで、マフィア一家のドンであるヴィトーの人物像や堅気の息子マイケルに対する愛情を鑑賞者に印象付ける冒頭から、映画の世界に引き込まれた。後半にある洗礼式と暗殺の対比も、マイケルの人物像を印象付ける名シーンだろう。ちなみに、洗礼を受けるヴィトーの孫を演じるのはソフィア・コッポラ。

さらに、ヴィトーとマイケルを演じるマーロン・ブランドとアル・パチーノの演技も素晴らしい。最初は演じている感がちょっとあったが、映画が進むにつれて自然とマフィアのドンと同化していくマーロン・ブランドが一番の見どころだろう。口に綿を詰めているとばかり思って見ていたが、オーディションのときにマーロン・ブランド自身がやってはいるが、撮影では専用のマウスピースをしたとのこと。ちなみに、原作者のマリオ・プーゾはヴィトーを演じるのはマーロン・ブランドしかいないと考えていたが、その当時の不調なマーロン・ブランドにパラマウントが難色を示すとともに、ブランド自身もあまり乗り気ではなかったらしいが、彼のアシスタントで女優のアリス・マルシャークの説得でオーディションを受け、ヴィトー役を掴んだ。

最初は堅気だったのにマフィアの世界に入って次第に厳しい顔つきになっていくマイケルの変貌を説得的に演じたアル・パチーノも良い。場面によっては、アル・パチーノが真田広之に見えた。二人とも(俳優の中では)背が小さいし、風貌もどこか似ている。コッポラ監督の妹であるタリア・シャイアが出演しているのは見る前から知っていたが、ダイアン・キートンが出ていることは知らなかった。ウディ・アレンのミューズになる前の若いダイアン・キートンがなかなか新鮮だった。
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