ニューランド

アポロ10号 1/2: 宇宙時代のアドベンチャーのニューランドのレビュー・感想・評価

3.7
✔『アポロ10号 1/2~』(3.7p)及び『犬王』(3.9p)▶️▶️

 アニメづいて、配信やレンタル店で立て続けに。
 リンクレーターも湯浅も(20C末から)21世紀を代表する(アニメ)映画作家で、奇しくも今回は、それぞれの国の歴史とその背景や成立ちをテーマに描いてて、アニメの領域をかなりはみ出した、一般的支配的ビジョンに疑問を投げかける作品となってる。『アポロ~』はお得意の、ロトスコープを駆使、というよりチャーミングに気負わずに使いこなし、軽くセンスある、サブカルチャーと先端科学の放逸への素直な惹かれ·受入れ伝播、地方の幼さや肉体性の残存を、当時の少年の目から書き留めてゆく(おそらく作者の自伝的なもの)。終末·陰謀論、冷戦·核の実体恐怖、東海岸よりは遠いベトナム、国家リードの財政歪みや罪悪感を(直感·大人吹き込まれで)裏返しに張り付けながらも、の1969年のNASA近くの家計的にもリンクした·ヒューストンアストロドームに近い、地域の家族の日々。湯浅の方は歴史捻じ曲げてまでの表現とその中心への拘りがある。
 リンクレーターの新作とその評判の良さは、世評や私など問題にしない、数十年映画語りの先端を走ってた人から聞いてはいたが、まさかNet FlIxで扱っていたとは。配信から9ヶ月以上経って、やっと視聴する。ロトスコープは、地方と一体残す家庭や学校、地域性とその隙間を埋め尽くすメディアや文化の流れ込み、ナレーションに乗り·実に多角的にスピーディにリアリティと、細かい時制を入り繰りもギクシャクせず、整理よろしく伝え来る。そこには、国威発揚を守る為の、人道も消失し·経済的にも国益に反す、成功を外せないアポロ計画月面着陸の、秘しての少年を使っての(小型規模での)予行演習、というエピソードをはめ込んでも違和ない、世の本質のたわいなさ·イージーさ、見方によると裏に潜む怖さにも繋がる不思議さを持つ。懐かしく思い当たると同時に、起点の踏まえを過ごしてしまった、看過をも思い当たらす。時制や場所の入り繰り、その細部引っ掛かりと脳天気さを、リアリティと軽い自在さで表すのに、ロトスコープはさり気なく、かつ細かいポイントの遺る匂いを放ちながら押さえてく。私はど田舎育ちだが、1969年に日本で同じ子供だった者にも、異常に懐かしくある。
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 『犬王』。湯浅は、あからさまな意図と野心を持った手法、歴史言及·現代通底の葬られたものの復権、を果たし、映像作家として、個人的に望むものを大方果たしたような仕事をしたようだ。カラーを無視したような、淡かったり暗すぎたりする様々モノトーンの朧ろで儚い重なりゆらぎ合う画調の多用、長く自由でめくるめく大胆カメラワーク、色彩と存在が対比·切り替わる高速モンタージュ部、異形の姿と·動きの人間を突き抜けたアクロバティックの刺激、当時のパフォーマンスを抜けで現代のロックと同調通底のフリー決め事無視の観客とコラボし合う熱烈さ。柔軟自在というべきか、とりとめがないというべきか。アニメの概念を壊しかねない、意慾·或いは捨て鉢にも見えかねない。 
 足利義満栄華の時代、南北朝の統一が見えなかった時期からもう一息にこぎつけた時期まで。せめて三種の神器の1つをと壇ノ浦で依頼した漁師の、父は死に·息子は盲に。琵琶の腕を磨く息子は、亡霊の父に見つけられない為、改名しての琵琶法師一門に入るには進まない。一方、後の能楽につながる雅楽の名門一家の末子は、抜群·意表の舞踏力を持っていたが、顔·手に際立つ異形の容姿故に、公演には出されず。その二人が意気投合し、一座を立ち上げ爆発的人気·庶民の多大な(革命に繋がりかねないような)支持を得る。平家の亡霊らが彼らには見え、その忘れ去らるを忍びない苦渋·苦悶を気づき、歌曲·舞踏として、拾い上げてゆく。それは、父の名門を追い落とし、中央権力主催指名の最大賛美の場制覇の栄光まで届く。しかし、南北朝統一目前にこぎ着けた義満は、足利政権を固める過去の歴史の一元化を計り、琵琶法師の語る『平家物語』も、全ての異説·傍流を禁ず。表現の中核をうばわれた、2人の主人公も、採る道を違えるが、現代になり亡霊の2人は再会·再合体す。
 異形の身体に生まれついたは、父がその世界の頂点を征する為に、魔性に胎内の子供を捧げたせいで、それは内なる天才が表現の分野を極める毎に、元々の1つずつ姿になってく、という骨格の1つは、手塚『どろろ』の百鬼丸のようであり、もう一人の主観的に閉ざされた世界の、芸術的拡がりは『TOMMY』のようでもあり、殊更現代のパフォーマンス·観客反応のノリの近しさを持っできたステージは何かおもねってて自発発展のオリジナリティに欠ける気もするが(異形のまま、謂れや繋がり未説明の侭、でよかったと思う)、それでも2022年の最大の意欲作には変わりなく、年内に観てれば(劇場に入る直前まで数ヶ月前に行ったのだか、個人的緊急連絡で引き返さねばならなく、年内にレンタルビデオ店に足伸ばすも、いつも貸出中で、年越してやっと借りれた)、テンベストに入れてたろう。
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