滝井椎野

リバー、流れないでよの滝井椎野のネタバレレビュー・内容・結末

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

時間もので群像劇、さらには『ドロステのはてで僕ら』のヨーロッパ企画と言われれば否が応でも期待してしまうところであるが……。本作は期待通り、それどころかその期待を軽く飛び越えてくれた。

タイムループものは世に数あれど、ここまでゆるく緊張感のない作品もなかなか珍しいのではないだろうか。
というのも、登場人物達のやり取りの可笑しさが絶妙で、クスリと笑えるシーンの連続連続。
それでいて無駄なシーンが無いため、体感時間は一瞬のように感じられた。

たったの2分間、なおかつ巻き込まれた登場人物たちがそれを認識できてるという設定が面白く、ほんの少しのーー何ならちょっとした違和感にしか感じないくらいの程良い塩梅のタイムループというのが良い。
テンポの良さや、登場人物たちが微妙な違和感に首を傾げる可笑しさを生み出している、良いアイデアだったと思う。

最後の最後、事態が解決する一連の流れも良い意味でグダグダながら爽やかで、故障したタイムマシンを何とかするという多少強引な幕の引き方がらしくて良かった。

『サマータイムマシン・ブルース』や『ドロステのはてで僕ら』に負けない、邦画の良さが詰まった傑作だった。
観れば貴船に行きたくなるに違いない。
滝井椎野

滝井椎野