なお

リバー、流れないでよのなおのレビュー・感想・評価

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
4.0
タイムラインに流れる好評レビューの嵐を受け急遽鑑賞。

制作会社のヨーロッパ企画は『サマータイムマシン・ブルース』や『ドロステのはてで僕ら』で有名。

どちらも自分は未鑑賞なのであまり大層なことは言えないけど、
「決してメジャーじゃないけど”隠れた名作”」を世に送り出し続ける制作会社だと認識している。

✏️未来は素晴らしい
映画史上「最も緊迫感のない」タイムループ作品。

物語の舞台は京都の奥座敷にある旅館「貴船」。
この「貴船」は実在する旅館で、物語のカギを握る貴船神社もまた実在する名刹であり、本作はほぼ全てのシーンこの「貴船」でロケを行っている。

「2分で時が戻る」。
自分が知る限りでは「タイムループ」を取り扱う作品において最も短い間隔で時間の逆行が巻き起こり、そしてその体験を主人公だけでなく「貴船」で働く従業員や観光にやってきたお客たちが共有する。

主人公だけでなく周囲の人物も「時が戻る」という事象を共有している群像劇は、他の「タイムループもの」にはない面白さと新鮮さがあった。

だいたいの「タイムループもの」では、
・タイムループを体験(認識)しているのは主人公およびそれに準ずる人物のみである
・タイムループすると、主人公以外の人物はタイムループ以前の記憶が消去される
・ループの開始には条件があり、主人公はそれを任意で発動することができる
…などなどの共通点があるのがセオリー。

しかし本作ではそれらの「前例」をバッサリと切り捨て、
「2分経ったら強制的にループ開始」という抗いようのない状況下で描かれる会話劇、そして人間模様。
時間は一向に進んでいないのに、まるで時が進んでいるような感覚に陥るストーリー展開が絶妙。

主人公含めた登場人物たちは早々に自分たちが「タイムループしている」という事実をあっさり受け入れ、この現状を打破するのか。それともしないのか、という選択を迫られる。

本作で描かれた「タイムループ」とは、恐らく「日々変わり映えのしない人生」のことを指しているのだと思う。

それはあの作家先生でいえば「どんなに作品を書いても書いても締め切りに追われ続ける人生」。
主人公・ミコトの恋人であるタク(貴船の料理人)でいえば「フランス料理という別の道に可能性を見出しつつもそれを打ち明けられず、和食を作り続ける日々」。
本作で描かれる事件が起きる以前から、彼らは「タイムループのような、時間が止まったような人生」を送っていたのだ。

だがしかし、実際に本物のタイムループを体験してみることで、彼らは「素晴らしい未来」への可能性を見出した。
いつまでも現状に留まっているわけにはいかない、と。

たった80分強の作品ではあるけれど、ただ面白おかしい、だけには留まらないテーマ性を孕んだ作品でもあるかな、と思った。

☑️まとめ
ちなみにこの「2分間」。
上映中試しに頭の中で時間を計ってみたのだが、ちゃんときっかり2分で場面転換が行われている点にも驚いた。

1ターン2分という制限時間の中で徐々に物語を進行させていくテクニック。
山口淳太監督始め、制作スタッフの手腕が光る作品でもある。

あとこれは余談だけれど、本作のカギを握るとある登場人物を乃木坂46のメンバーである久保史緒里さんが務めた。
彼女は現在放送中の大河ドラマにも出演している期待の若手俳優。

自分と同じ宮城県出身なので、これからも頑張ってほしいな。

<作品スコア>
😂笑 い:★★★★☆
😲驚 き:★★★★★
🥲感 動:★★★☆☆
📖物 語:★★★★☆
🏃‍♂️テンポ:★★★★☆

🎬2023年鑑賞数:69(33)
※カッコ内は劇場鑑賞数
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