Punisher田中

哭悲/The SadnessのPunisher田中のレビュー・感想・評価

哭悲/The Sadness(2021年製作の映画)
3.5
謎の感染症「アルヴィン」を長い間対処し続けてきた台湾。
そのウイルスの症状は単なる風邪の様で、ウイルス対策によって不自由な生活に不満を持つ人々の警戒はいつしか解けてしまう。
しかしある日、ウイルスが突然変異を起こし、人の脳に作用して凶暴性を助長する疫病に変貌。
ウイルスが蔓延した街は人と拷問で溢れかえるなか、生きて再会を果たそうと賢明に
生きる男女の姿があった.....

本当に良くぞ公開できたなと....
嵐の様に始まって嵐の様に終わる、嵐の様な作品だった。
幸せないつもの日常から一変し、突如として血にコーティングされた非日常を送らされることとなる離れ離れのカップルを描いたものだったが、2人と一緒に僕達観客側が惨劇を味わうジェットコースター映画に仕上がっている。
残念ながら狂気を物理的に描くだけで、狂気を素っ裸に解明するような、狂気の根源・原因を究明するものではなかったのが残念で、いささか薄っぺらく感じてしまった。
しかし、それで良い!それが良い!
狂気の根源なんてものを深掘りした作品は確実に僕達を苦しめ、狂わせるだろうから、このくらい薄っぺらいエンタメ作品で正直ホッとしたというか...
勿論、倫理的に""終わってる""描写が多過ぎる....
普通の作品なら絶対に""その先""を描かない「あってたまるか!」な描写をこれでもか!と見せつけられるため、最悪な気分になるし、鑑賞を決めた時点ではもう逃れる事が出来ない危険な作品なのは変わらない。
なので、今作を鑑賞する際には絶対に精神状態が""良い""時にして欲しい。

じゃあ、なんでこんなに痛い目を見てまで鑑賞するのか??
興味本位に決まっとるやろがい!!!
最近はようやくグロ描写にも慣れてきたので腕試しに行ったのと、数々のホラー作品を漁っているライターさん方の評があまりにも阿鼻叫喚の嵐だったので、こんなん観に行くしかないやろ!!
とまぁ、滅茶苦茶痛い目に遭ってきました。
漸く今作のレビューに入るが、スリラーとしては最高だった。
ドラマなんかはクソ喰らえ、とにかく人間に秘める暴力性と欲望の強さを荒いタッチで次々と描いており、ほぼ終始、ドリッピングで描かれた絵画を見ている様な感覚だった。
人の悪意と狂気、暴力といった絵の具が吹流されていく。
あまりにもやりすぎな惨状、過激すぎるグロ描写の過剰摂取で観客側ですらも主人公達同様に段々と麻痺していく善悪の境界。これこそが今作の表現したかったことで、しっかりそれが出来ていた様に思う。
確かに危険な体験ではあったが、エンタメ、そもそも制作物として突き抜け過ぎていたからこそ入り込みすぎず、精神の浅い場所でスッと溶ける。
思えば、面白いというよりも、興味深い作品だった。
確かに「二度と見たくない傑作」の評は間違いないが、表現は荒いが、映像テクニックがかなり効果的に考えられて使用されている、なかなか丁寧な作品だったように思う。
まあ、本当にもう二度と見たくは無いけども。

まさか、今作を公開日に鑑賞することになるとは...今思えば別の目的で取った有給も運命だったのかも...