ヴィクトリー下村

ショーイング・アップのヴィクトリー下村のレビュー・感想・評価

ショーイング・アップ(2022年製作の映画)
4.3
『ファースト・カウ』が美しいお伽話的な話だったのに対しこちらはグサグサ刺さる系の話。

リジーは自分の展覧会の準備で忙しい。本来は個展に集中したいのに、隣人の同級生や家族のことで集中力が削がれてしまい…という話。

いつまで経ってもお湯の出ない部屋、少し見ない間にヤバくなってる兄貴、失礼な同居人を平気で住まわす父親、行動がいちいち気に障る隣人…と観てるこちらもフラストレーションが溜まってくる。

特に隣人でもありジョーとの対比はキツい。
才気溢れる人物で生きるのが器用なジョー(少なくともリジーにはそう見える)との関係はまさに陽キャと陰キャのそれ。
あからさまには出さないが、リジーの行動から羨望や嫉妬の感情が読み取れる。

じゃあ、フラストレーションを溜め込んだリジーがぶち切れる展開が待ってるのかというとそういう訳でもない。
せいぜい留守番メッセージに文句を残すだけ(それすら言い返される)。

これ共感しかないけど、本当の陰キャはドラマや映画みたいに怒りを爆発させることもできないんだわ…

ミシェル・ウィリアムズ、ケリー・ライカートの作品だと基本仏頂面しか見たことない。

終盤の個展の場面は、観てるこちらもイライラ度MAX。

なんだけどそこから一転。
美しくて爽やかな終わり方をするから鳥肌立ってしまった。 
物語のキーになってる「鳩」の使い方が見事。
この作品も終わらせ方が凄く良かった。

ケリー・ライカート、自分の中でアキ・カウリスマキと同じくらい好きな監督になりつつある。