まさに「The 悪趣味映画」
清々しいまでに悪趣味映画だった。
これまでも奇抜でアブノーマルなテクノロジーを題材にした映画を
取っているブランドン・クローネンバーグ。
新作は「罪を犯しても自分のクローンを作らせて身代わりにできる」というとんでもない法律が存在する島が舞台。
6年間スランプに陥っている小説家のジェームス、妻と共に訪れたこの島で誤って人を車で轢いたことによって悪夢のヴァカンスが始まる…という内容。
ブランドン・クローネンバーグ監督、題材もそうなんだけど作風や演出がが一貫してる。
映画冒頭の天地がひっくり返る演出は『ポゼッション』でも使われていたが、今作だと「これからこの世のルールがひっくり返るぞ」という宣言みたいで気分を煽ってくれる。
オープニングも格好良いし途中のサイケな映像が連続する演出も良い。
ブランドン監督の作品、やっぱりビジュアルが良いんだよね。
物語はジェームスにとって最低最悪の地獄体験。
自尊心も何もかも丸裸にされ堕とされたジェームス、そこからリベンジ的展開がある訳でもないしカタルシスもない。
悪趣味なだけじゃなく意地の悪い映画でもあると思う。
ミア・ゴスは一時期の香川照之を思い出すくらいインパクトのある顔面。
この顔見るだけでも一見の価値はあるかも。
ブランドン監督、いつも奇抜なアイデアを活かしきるという印象がなかったのだけど、ハイテクノロジーのアイデアを活かすよりは、それによって変貌する人間の姿に着目してるということに3作目にしてようやく気付いた。
ジェームスの最後の行動をどう捉えるかは人それぞれだろうけど、自分はすべてを失った男が本当の意味で自分を見つめなおそうとしている行動に思えた。
そういう意味でジェームスにとって、このバカンスは生まれ変わりの場所だったのかもしれない。