いしんじ

CUBEのいしんじのレビュー・感想・評価

CUBE(1997年製作の映画)
3.3
割とガチで、死ぬかな〜っと思ったタイミングで人が死なない。ホラー映画でいやらしく鏡が写されたのに何も現れないみたいな、そんなドッキドキを何回も味わう。

回想とか裏組織目線とか無くて、得られる情報は本人の口から出てくる言葉のみなのがまた良いね。「同情」とか「ドラマチック」を映画側が観客に求めてこない。だから、それぞれの人物や言葉の「価値」を観客側で決められる。 "極論を言えば" 全員が詐欺師で、言われてた肩書きは全部嘘だと思うことも可能である状況。

つまり何の言葉までを嘘・本当と受け取り、何か隠してることあるだろ?と思うことも自由。

と、こんなことを書いておきながらなのだけど、その「自由さ」は、実は自由に見せかけて自由では無かったんだろうなぁとも思ってる。

だって、バランスの取り方がすごく上手いんだもん。例えば、音を出したら殺されるのに、声を出され、そりゃブチ切れるよって状況。でもおばさんは声を出した子を物凄く強く強く擁護する。そのおばさんは警官に罵倒される。
このシーンとか、観客から観た時のヘイトポイントの溜まり方がどこかにあまり偏りにくくなってる。

「声を出した子」 ⟵めっちゃ悪い
「怒る警官」 ⟵殺されけたしわかる
「擁護するおばさん」 ⟵いくら何でも殺されかけたのは分かってあげて
「おばさんを罵倒する警官」 ⟵ん?それはそれで違うくね?
「おばさん言い返す」 ⟵おばさん強いな
「数学の子が2人をたしなめる」 ⟵この頃には声出した子への感情が薄まっている

みたいな。だから、誰を恨んで、誰を許すのか、そこら辺が観客に結構委ねられてる。だから、割と「作られた自由」の中で感情を動かせていたんだなと感じる。


最後まで裏組織側の目的も、集められた理由も、出たあとのことも、何も知ることが出来ない「分からない」だらけなのがまたいいね!
こんな気狂ってないとできないようなことをする人たちの目的なんて、分かる方がこじんまりとしてしまうのよきっと。
いしんじ

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