このレビューはネタバレを含みます
混じり気のない澄んだ瞳に、人間という多様性に溢れた滑稽な生き物を映し出す。
本当に秀逸だなと感じたのは、冒頭からイーオーとカサンドラの愛情に満ちた繋がりを描いていたところです。
この描写のおかげで、まんまと、
「イーオーはカサンドラといた時が幸せだったのに……クソ動物愛護団体め」
という気持ちを刷り込まれる寸法。
でも、気性がおとなしくモノ言わぬロバの本当の幸せは分からないし、人間に決めることはできない。
確かにカサンドラのイーオーに対する愛情は伝わっていたと思う。
でもサーカス団に戻れば、鞭で叩かれることだってあるわけですよね。
「カサンドラの元へ返せ……」
その発想を持った時点で、自分と動物愛護団体とが合わせ鏡のような存在になっている可能性を考えなければいけないのだと思いました。
カメラワークや音の使い方がとても魅力的。
芸術的な観点から観ても、ずっと浸っていたくなる素晴らしい作品だったな。