このレビューはネタバレを含みます
「この映画は動物を愛するところから生まれた。撮影で動物を傷つけていません」というエンディングの字幕が皮肉めいていた。
点滅する赤い光が映す女とロバ。
ロバのEOはサーカスの見せ物であり雑用だった。「モノ」扱いする人間もいれば、EOを愛して世話した者もいた。
「道徳的な過去の誤りを正す」ために、突如EOは市の新設した厩舎へ。そこから生が転回を始める。
牧場、サッカーチーム、動物病院、飼育小屋、食肉工場行きのトラック、青年が実家へと帰るために乗る荷台…。そして最後はヤギとともに追い立てられ再び厩舎のような所へ。
常に人間は身勝手に愛し、身勝手に暴力を振るった。「動物を愛す」ことは常に叶わぬ願いだ。EOはたびたび、サーカスで自分を大事にしてくれた女を思い出す。しかしそれが、果たして人間が思うものであるか。ここには製作陣の「道徳的」願いがあったのではないか。
映像は写真的な構図が多く、風景と相まって惹きつけられた。
付加された音(音楽、SE)は全て大きすぎ、過剰で、私に「前のイスを蹴ろ」と圧力をかけてきた。首を傾げて我慢した。