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EO イーオーのKuutaのレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
3.8
なんじゃそりゃな映像の連発で、銃のポインタで狙われる場面が特に面白かった。

モチーフは多いけれど、どれも深入りし過ぎていない。オクジャみたいな屠殺の話でもあり、ブレッソンよろしくキリスト教的な深読みも出来そうだけど、聖体拝領が電話で遮られるくらい、宗教についてはさらっと描かれている。

「香も高きケンタッキー」を見られたのが良かったなぁ、と今年の劇場鑑賞をぼんやり振り返りつつ、馬って映画に映えるよねという確信は今作にも刻まれている。馬を見つめるEOの目から、羨望と嫉妬を読み取れなくもない。

しかしあくまで今作は、孤高の異端者にして聖なるロバの映画である(イザベルユペールの登場シーンだけは彼女が強すぎて映画が歪んでいる)。サーカス出身のEOは街にも森にも牧場にも属さない。冒頭から死→生を演じたかと思えば、ガチで死にかけるとロボットの力も借りて復活する(冒頭と同じように蹄を掲げる)。ロバがロバのイメージを幻視しながら、未来の家畜としての四つ足ロボットと意識を同調させている。文字にすると改めて変な映画だなと思う。

いろんなロバが作中のEOを演じており、終盤の逆再生含め、彼?の意識が人の時空を超えてふわふわ漂う感覚を味わう事ができる。「人間目線の独善的な映画」という批判もあるようだけれど、宗教要素や動物愛護といった「人間的」なモチーフに囚われ過ぎない方が良くて、EOくんから見た世界の輪廻、くらいのノリで見るとしっくり来るはず。面白かった。
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