コマミー

別れる決心のコマミーのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
3.8
【疑いを紛らわすスパイス】



※珍しく連休じゃない祝日に休みが取れたので、先週逃してしまった"パク・チャヌク"の新作を観に行きました。





パク・チャヌクと言えば、暴力とエロティズムが絡んだミステリーやらサスペンスやらが売りの監督なのだが、今回はそれを一切封印し、若干"ファムファタール"感と"ノワール"的な要素を含んだ硬派なサスペンスに仕上がっていた。

全体的には割とポール・ヴァーホーベンの「氷の微笑」を思わせる"不思議な魅力"を放つ"被疑者の女"に"翻弄"される"刑事"を描いた作品なのだが、劇中の登場人物の仕草や行動・言葉の数々がヒッチコックの「めまい」も思わせるものとなっていた。サスペンスをこよなく愛する世代が一気にハマる、パク・チャヌクの最新作となっていた。
本作ではその点で言うと、"言葉の繋ぎ方"がラストの決め手となり、本作の巧みな部分だなと感じた。サスペンスの特性をちゃんと活かしているし、地味にではあるが、監督の今までの作品の特性も加えている。

"タン・ウェイ"の役作りはずーと変わらないなと感じた。彼女の良くやる役どころの特徴としては、やはり「ラスト、コーション」のような不思議な魅力を放つ女性を演じられる所だろう。彼女が演じる被疑者"ソレ"の危険な笑みなどの繊細な表情が、物語を彩らせてくれて良かった。これからも注目していきたい。
そして刑事"ヘジュン"を演じた"パク・ヘイル"の"ほぼ無表情"な演技も、物語の怪しさを一層引き立ててくれた。遠くから見たら冷静沈着な男なのだが、近くで見ると、疲れが溜まってる人間に多い、少々オドオドとした印象も感じる、サスペンスやミステリーに適した餌に釣られてしまう典型な男性の表情であった。

今までのパク・チャヌク作品を想像してしまった方にはインパクトに欠ける作品かもしれないが、サスペンス好きには広い世代に受け入れてもらえる作品となっていた。
それ以外ならば、登場人物の心情変化を表情で深く感じる事ができる至高の作品でもある。

この表情と劇中の言葉運びにだいぶ助けられている作品だと思いました。
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