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別れる決心のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
1.5
【ヒッチコックの足元にも及ばない】
第75回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、日本でも話題となったパク・チャヌク『別れる決心』がAmazon Prime Videoに来たので観た。本作はよくヒッチコック映画みたいだと言われるが、実際に観て観ると上手くないヒッチコック映画だと感じた。

いわゆるファム・ファタールもので、独特な形をした岩山から転落死した男の妻に惹かれてしまう刑事を扱った作品である。確かに双眼鏡を使って見る/コントロールする側がいつの間にかコントロールされる側に立つギミックや、「俺は眠れないから捜査している」という台詞から一度入った沼から抜け出せなくなるあたりはヒッチコックを意識しているなと感じる。ただ、話のテンポが悪い意味で早い。パンパン場面を切り替えていくのだが、それが修羅場の宙吊り状態に紐づいていない。生きるか死ぬかの宙吊りをギリギリのところで回避するが、新たな修羅場が生まれる。それを追う/追われるの関係で描くのが面白いヒッチコック映画の特徴なのだが、キャラクターを駒のように動かすためだけにコロコロ場面転換しているように見えてしまい、それが退屈さにつながってしまった。無論、あまりフィルム・ノワール/ファム・ファタールみたいな物語が得意ではないので相性が悪かっただけなのかもしれない。第75回カンヌ国際映画祭コンペティション作品を大分観て来たが、火力の高い作品は少ない微妙回だったのかもしれないなと思った。
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