凜太郎

別れる決心の凜太郎のレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
4.0
なんだこれは…!!!なんだこのエンディングを観た後に胸に残るものは…!?
男女の関係のこんな描き方があるのでしょうか?

未解決事件を追い続ける刑事と殺人事件を犯す女。
周りの人物から言われているようにヘジュン刑事はワーカホリックに近い。
妻と遠距離婚しようが、眠る時間がなかろうが、へジュンにとっては未解決事件を追うことが生きがいです。
そんなへジュンのもとにソレは、彼女の夫の死亡事件の容疑者として現れます。
いわばソレは「未解決事件」を背負ってへジュンの前に出てきたわけです。
へジュンはソレを監視し始めるのですが、「調査」という建前での二人の距離感の描き方がやばいです笑

ソレを監視したり事件当日の足跡を追う中で、ヘジュンは彼女の存在をありあり間近に感じ始めます。
ついに「自分がソレとその場にいっしょにいるかのような妄想」をして、タバコを吸うソレに灰皿を差し出すへジュン。
こんな想いの描き方があるのでしょうか笑
ソレはソレであくまで「容疑者」としてへジュンを振り回す。
いわばストーリーを進める「縦糸」は完全に「刑事モノ」。なのにそこにかかる「横糸」は「男女の関係」です。
しかもカットの切り替えを同じ構図にして、いわば前後の映像で韻を踏むようなオシャレなことしています。

ただ、分をわきまえた大人たちだからこそ、直接的な表現はあまりできません。
あくまで「刑事と容疑者」という関係を保ちつつ、婉曲や間接的な何かを間に挟んで成立させようとしています。
そして起こるのが「第二の殺人」。
へジュンとソレは再び、「刑事と容疑者」という形で結ばれることになるのです。
へジュンは既婚者であるため、いわば殺人事件を「アリバイ」として関係を続ける二人…

「本音」はあるのに最後まで「建前」を貫き通した愛情なんでしょう。
「建前」しか続けられなかったのは確かに不器用ですが、その「建前」を貫き通したのはもはや一途な愛と言ってあげたいですね。
凜太郎

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