ベルベー

逆転のトライアングルのベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

ガッカリしたなあ!前半はシニカルおバカコメディとしての勢いが凄くて賞レース大人気も納得の魅力を感じただけに、後半の尻すぼみが激しすぎる。

「金持ち共を乗せたクルーズ船が遭難したら乗組員の方が立場上になっちゃった」って、宣伝で謳われているあらすじに全然惹かれなくて。だって古今東西ありがちじゃないですかこういう話。「東京島」とか。で、「東京島」あんま好きじゃないし、なんでこのあらすじでパルム・ドールなんだろう?って。

そしたら実は無人島でのくだりは後半部分だけで。前半はイケすかない金持ち達のイタすぎバカすぎ会話劇で面白かった。見るからにアホなモデルとインフルエンサーカップルの奢る奢らない痴話喧嘩なんて、伝え聞いていたあらすじと何も関係ないけど超笑ったもん。「え、なんで俺が奢る前提なん?今日は私払うね〜って言ってたのに?」って最初だけは男側に同情するのに、そっから男がネチネチネチネチ、しまいには閉じかかったエレベーターの扉何度もこじ開けて怒鳴る怒鳴る。情けなさすぎて笑うしかない。

クルーズ船の中のくだりも面白かった。金持ちがクソすぎて。「あなた達、仕事ばっかりで可哀想だわ〜、私なんてプール満喫してるのに!あなたも泳ぎなさいな!」→「いいから泳ぎなさいよ!私の命令が聞けないっての!?」のハラスメントババアなんて何もかも最低で笑うよね。存在自体がハラスメントで何ハラに類するのかも分からない。

船揺れまくり、雲行き怪しくなりまくりなのにディナー強行した結果起こる惨劇については間違いなくこの映画のハイライト。汚ねえ!!絵面の汚さにかけては間違いなく今年観た映画で一番だよ!ともすれば「トレインスポッティング」のスコットランドで一番汚いトイレシーンを凌ぐトラウマものなんだけど、酷い目に遭っているのが前段でクソムーブしまくった金持ち共だから、クソまみれになっても笑える。世の中は金持ちに厳しいのだ。金持ち共に匹敵する変人でクソ野郎の船長は、全員ゲロゲロしてる中エンジョイしてるのも酷いよね。その直前まで体調悪そうにしてたのに。

ここまでが良かったから「無人島着かなくていいのに〜着いたところで面白くなるかなあ〜」と思ってたんですが、予感的中。面白くなかった。前半の意地悪なシニカルさは影を潜め、このメンツが無人島に漂着したらこうなるよね、ってテンプレの展開しか起こらない。イケメン寝取るオバハンとか、この時代やっても何も面白くないやろ。

ラストなんて、そりゃ当然作り手は色々なパターンを思案した上でのあのラストなんでしょうけど、思案した上でアレなら至極ガッカリだよ。「LOST」の途中シーズン最終話かよって。連ドラのクリフハンガーじゃなくて映画でアレって…アレ加点要素になんのカンヌ?そこに至るまでの無人島で本作のテーマを深掘りできているなら話は別かもしれないが、できてないんだもの。テンプレなぞってるだけで。

だから前半観れば十分だったかなこの映画。ちょっと期待しすぎた。
ベルベー

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