3層構造、糞尿の逆流に始まる革命って、カンヌはパラサイトをもう忘れたの?と思った。ヨーロッパの知識層好みにアレンジされたパラサイトというか…。
パラサイトは高低差の見せ方が抜群だったけれど、ゆっくり横揺れが続く今作の映像にはもどかしさを覚えた。ゼリーをぷるぷる震わせるよりもショットで見せて欲しかった。映像面でもう一つ高評価には至らず。
・長めの間とじっくり寄るカメラ、「私の方が稼いでる」と言った瞬間に別の席の男に笑われたように聞こえる音の演出。リューベン・オストルンドの手腕は堅実。ロバを殺した後に泣きながら抱き合って喜ぶ男たち。情けなく身勝手なホモソ感は「フレンチアルプスで起きたこと」の夫チームの描写から変わっていない。
・ホテルのライトが一個だけ消せないのめっちゃわかる
・インデンヴォルケンと言われ、とりあえずそのままヴォルケンと繰り返した夫に笑った。私には脳内のモヤモヤの象徴に聞こえたが「美しいわね」と雑に返した妻にも笑った
・2択の運試しを続ける限界飲酒バトル。言いたいフレーズだけでコミュニケーションを取っている気になる泥酔飲み会、正直身に覚えがある。映画のタイトルだけで盛り上がれる状態
・第1章は「フレンチ…」のようなじわじわ刺してくる意地悪さが見えて私好みだったが、次第にエンタメ路線に。ラブボートのくだりは割り勘問題の対比になっており、これをやるために漂流ものにしたのかな?と感じた。性差と連動した社会格差。攻撃的なボディランゲージは文字通り体に染み付いている。「この時間を楽しもう」と呼び止めた人物の最後の表情は悲痛だ。ただこの言葉は、ロシア人妻がスタッフに泳ぐよう求めた時と同じものではある。
・この作品に限ったことではないけれど、リゾートの薄っぺらさを揶揄する視点は新鮮味を欠いている。リゾートはダサいし観光客もダサいけど、そもそもそういうものでは?