ラグナロクの足音

逆転のトライアングルのラグナロクの足音のレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
4.1
まずはヤヤ役チャールビ・ディーンのご冥福を。
人が本性を露わにしていく姿を見るのは実に愉快だな。権力についての鋭い洞察を見せてくれる作品だった。豪華客船が沈没して無人島と思しき場所で漂流生活をすることになった連中の権力構造が逆転する。サバイバルスキルを持ったトイレ掃除の女性が権力者となり、資本主義社会では権力者だった連中がひざまずくことになり、性的な搾取も行われる。人は誰しも権力に溺れるといえば簡単に聞こえるのだけど、あの状況では彼女に付き従うのが生存戦略として最も正しいことは確か。人は結局のところ、一人でサバイバルできない存在なので、あのように寄りあいながら生きるしかなく、そうすると権力のヒエラルキーはどうしても発生してしまう。ちなみに原題は「Triangle of Sadness」で、直訳すると「悲しみの三角」になるが、美容用語で「眉間にできる皺」を指すのだとか。男性モデルのオーディションのシーンで眉間と口元がどうのこうのというやり取りがあるし、主人公カップルのカールとヤヤ、それに第3章でからんでくるもう一人を加えた三角関係にもかかっていると解釈できる。もちろん、富と美と力に翻弄される人間の悲哀を描く三幕構成を示唆してもいるだろう。ラストの考察をメモ:ヤヤとアビゲイルが二人で出掛けた後で、行商人が漂流組の滞在しているビーチまで来た→これでビーチに居た全員がここがリゾート地だと分かった→カールはヤヤとアビゲイルに伝えようと山に入るが、二人がずいぶん奥まで出掛けたのだと分かった→カールは今更ながら「これは愛する男を巡っての殺し合いになっている可能性がある」と思いついた→カールは手遅れになる前に二人に追いつこうと全力疾走した
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