アキラナウェイ

アルマゲドン・タイム ある日々の肖像のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

3.2
「エヴァの告白」はそこそこ良かったけど、「アド・アストラ」はブラピ主演のSF作品だけど眠くて眠くて椅子からずり落ちそうになったっけ。そんなジェームズ・グレイ監督作品。

1980年、NYのクイーンズ地区。ウクライナ系ユダヤ人の一家で育った11歳のポールは芸術への高い関心を持ちながら、学校で上手く馴染めずにいた。唯一の友達は黒人のジョニー。しかし、2人で学校のトイレでタバコを吸った事で、ポールは親から無理矢理公立から私立の学校へ転校させられる事になり—— 。

いや、ちょっと待って。
1人の少年の成長譚なのかも知れないが。

母親の作った料理をけなし、中華料理のデリバリーを頼みたいと勝手にダイヤルし始めるポールの姿にイライラ。

だって、母親はアン・ハサウェイぞ!!
あの、
超絶美しい、
アン・ハサウェイぞ!!

ま、アン・ハサウェイも80年代のステレオタイプな母親を演じるとあって、サザエさんみたいなパーマだったけども!!

そもそも作ってもらった料理にケチつける人間は、文句を言うなら自分で作ったらいいし、食べる資格はない。

親に反発してばかりのポールだが、そんな彼の良き理解者は祖父。演じるはアンソニー・ホプキンス。安心安定の演技力は流石。

私立の学校に転校してから、周囲の友人が黒人を差別している様子を見て、ポールも次第にジョニーを疎ましく扱うようになり…。

しかし、そんな孫に祖父(アンソニー・ホプキンス)は言う。

「差別する友達に迎合する事なく、
高潔な人であれ」と。

ポールは絵描きに。
ジョニーは宇宙飛行士に。

どれだけ周囲にバカにされても、
それぞれの夢の打ち上げを胸に、
将来に向けて大きく羽ばたく筈だったのに。

彼らの目の前に立ちはだかったのは、大人達が作り上げた"不公平"という名の暗黙のルール。そんな中でポールは幸運にも道を踏み外すのを免れ、ジョニーは…。

ポールよ。

君はダンスパーティーを抜け出して何処へ行くのだろう。

劇中、祖父によるユダヤ人差別についての言及や、子供達のコミュニティの中にも黒人差別が存在している描写等は真に迫るものがあったのに、結局の所、ポールに暴力的でベルトで鞭打つ仕打ちを"教育"だと勘違いしている父親が語る、"不公平な社会"を知る事でポールが成長していくラストは、あまりにも救いがない。ジョニーはきっと宇宙飛行士にはなれなかったのだろう。

では、監督は何を語りたかったのか?

キャストは良いのに、僕はこのストーリーに魅力を見出せなかった。