いつもいっちゃん

聖地には蜘蛛が巣を張るのいつもいっちゃんのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
4.8
アリ・アッバシ監督最新作。
カンヌの女優賞受賞。
またも強烈。
衝撃作でした。

舞台は聖地マシュハド。
16人の娼婦を殺害したスパイダー・キラーを追う女性ジャーナリストの物語。
事実にインスパイアされただけあり、中々のリアリティ。
ジャーナリスト目線と犯人目線で語られる物語がやがて惹き込まれる様なスリラーへと変貌していく。
女性であるだけで1人でのホテルの宿泊もすんなりいかない。
また扱いはかなり酷い。
まるで女性に人権が無く、聖地と呼ばれたその場所も身勝手な男の巣窟であることが浮かび上がる。
快楽殺人と信念が表裏一体になった様な犯人の思想。
殺人鬼とその家族の日常が凄くリアルで、より生々しい。
そこに飲み込まれそうになる女性ジャーナリストの命懸けの捜索。
治安の悪さ、娼婦や女性の扱われ方などが容赦なく描かれる。
娼婦を殺すことが街の浄化と信じて動く殺人鬼と、街に蔓延る特定の人権の在り方。
エゲつなくサスペンスフル。
今もまだそこにあるリアリティを突きつけてくる傑作。
かなり尾を引く余韻。