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聖地には蜘蛛が巣を張るのnanaのネタバレレビュー・内容・結末

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

『ボーダー 二つの世界』で世界に衝撃を与えたアリ・アッパシ監督の最新作。
『ボーダー』は北欧ノワールでしたが、本作は監督の出身地であるイラン色の濃い作品となっています。
しかし本作はドイツ・スウェーデン・フランスの合作映画。
この内容的にイランで作ることは難しかったんだろうな、と観ていくうちにひしひしと感じます。

娼婦連続殺人事件をテーマにしていますが、本作は犯人当てのミステリーではありません。
物語の序盤でとある男が急に登場し、この人は誰なんだろうと思いつつ観ていると、彼こそが連続殺人鬼であることが早々に明かされます。
彼が犯行を重ねる様も並行して描かれるので、構成的には『ザ・バニシング -消失-』も近いような気がします。
さすがアリ・アッパシ監督作ということで、サスペンスとしても一級品に「面白い」作品であり、その内容が投げかけてくるものの重さ、そして止まることはないと思われる闇の連鎖を匂わせる幕引き。
鑑賞後の余韻はずしりときます。

人が殺されているという状況にも関わらず、娼婦が消えることで町が浄化されると犯人を庇い崇拝する市民たち。
娼婦を必要とする多くが男であれば、憎み殺すのも男なのか。
彼らは決して、娼婦を利用した男たちを汚らわしく思ったり、憎むことはしない。
このような現象はきっと世界中どこの国でもあり得ることで、単に「イランが特別に変な国だから」とか「宗教がやばいから」というだけの話ではないはず。
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