けーはち

聖地には蜘蛛が巣を張るのけーはちのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
3.8
実話を基にイスラム教シーア派の国イランの聖地での連続殺人を描く。娼婦殺しのシリアル・キラーなんてもはや定番中の定番だが、逮捕後の取り調べで動機について犯人がモラルの浄化を掲げ、保守的な神権社会で、かなりの支持を得る。また主人公は事件を追う女性記者で、女だからと警察関係者にナメられて危うい状況に追い詰められる。あらゆる角度から女性の人権がハードモードな状況を告発する社会派のテーマもさることながらスリリングな娯楽性もかなり高いレベルで両立しているサスペンス・スリラー。狂気の殺戮者もかつては国のために立派に戦った退役軍人で、家では良き父・良き夫で、事件発覚後も彼の家族はみんな建前でも彼を立てる形にしていたら、彼の若い息子が「親父の手口はこうして首を絞めるんだ!」「俺も親父の跡を継いで、娼婦殺しまくるぜ!」みたいに無邪気に宣言するあたり、気が滅入るような闇深さをイラン出身デンマーク在住の監督は淡々と描く。