けーはち

ブラス!のけーはちのレビュー・感想・評価

ブラス!(1996年製作の映画)
3.7
炭鉱閉鎖の逆境の中で全英優勝を果たした労働者バンドの実録奮闘記。広義の吹奏楽とは違ってサクソルン(saxhorn)属の金管楽器のみで統一された柔らかく重厚な音色が特徴である英国式の金管バンドは、いわば「飲む・打つ・買う」以外の健康的な活動として労働者に奨励された(鉱夫は肺を病みがちなので)。普通それは本業あっての物種であるのだが、鉱山が閉鎖、生活苦の中、それでも主人公らは勝つ。その強固な意志は一体何なのか。本作ではそれを政策に翻弄される脆弱な労働者の連帯に加え、伝統・親子愛・家族愛・友情など、人間的尊厳の問題として捉える。正直「フラガール」的なライトな展開かと思いきや、不景気の英国の中でも炭鉱という斜陽産業の袋小路な顛末を映し出す暗いトーンには面食らったが、ピート・ポスルスウェイトの音楽野郎ぶりを中心にした生活者・労働者の魂が生々しく熱い。「トレインスポッティング」で人気絶頂のユアン・マクレガーが女に弱く賭けに溺れるダメ男を演じるのが微笑ましい。