三平

ゴールデンカムイの三平のネタバレレビュー・内容・結末

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

自分は実写化に関してはどちらかというと、原作と実写映画で完全に切り離して鑑賞する方なんですが(単純に映像として再現するの難しそう、尺に収めるの難しそう、漫画表現を現実の人間がやる形に落とし込むの違和感解決するの難しそう…みたいな)(好きな作品に対しては原作をよく理解した上で世界観壊さずにテーマを書き切ってほしい気持ちもある)

ゴールデンカムイの場合は、原作が31巻あるので、あの壮大な話をどう実写化するのかな〜とずっと気になっていた。

結果。よかった。超超超最高だった。
本当に面白い映画だった。原作の野田サトル先生が描いた「ゴールデンカムイ」漫画そのままの世界観だった。二次元が現実の映像になってる!?みたいな衝撃だった。脚本、演出、構成、撮影、キャスティング、演技。こんなに多方面で原作愛を発揮して、さらにその愛を観客に全力でぶつけてくる実写映画もなかなかレアなのでは。良過ぎて感想を語る語彙をほぼ失ってしまうくらいよかった。

もちろん尺や演出上の都合もあってか、2つのエピソードを1つに合体させたり(最初のvs尾形の戦闘シーンと白石との出会いなど)、逆にオリジナルの演出にしてた部分も結構あったんですが、とにかくそのバランス感がうまい。漫画の膨大でボリューミーなエピソードの中から取捨選択した上で、かつ尺に収まらずやむをえずカットする部分を最小限にするために合体させたり再編して、本筋に違和感がでないように繋げてるのがうま過ぎた。話のベースは1-3巻だけど、それ以降の巻からも重要なエピソードを持ってきてるのがよい。
また、終盤のクライマックスでは、原作で短かったシーンが掘り下げられて、画面としても盛り上げつつ、長尺で各キャラの性格や個性がより分かりやすいような戦闘になってたり、とにかく映画としての見せ方がすごかった。

特に馬が走りながらひくソリの上での戦闘シーン。アクションよすぎ!!どうやって撮影したんだろう。
弟の復讐に燃える執念深い二階堂と、あくまで冷徹に個人の感情を見せずに任務を遂行しようとする月島(ない、ではなく表に出さない、が月島の肝だと思うんですが、役者さんがそのあたりの微妙な違いを演技で出してるのがすごかった)。
それぞれの戦闘スタイルの違いや、アシリパさんを守るような動きを見せる杉元など、単なる戦闘シーンにもそれぞれの人間性が見え隠れするのが良かった。
あまりにも良過ぎて、原作にあったシーンと一瞬錯覚してしまう程完成度が高かった。あれこれ原作エピソードに…あったよね?あれっない?実写オリジナル!???というくらい違和感がなくゴールデンカムイ。

馬が撃たれたあと、馬が前のめりに倒れて落馬した後に即座に立ち上がり駆ける鶴見走りまで、そのままで再現されてて本当に俳優が全員すごい。俳優インタビュー読んでも、あの走りを再現するために玉木宏さんがとても努力されてたとあり、本当に愛が深い

冒頭の203高地も、たくさんの命があっけなく失われるような戦争の恐怖を描いててよい。
あの砲台の音の地響きとともに鳴り響く感じや、突撃する時に同じ人間を相手に近接戦する恐ろしさ…。久保監督は今回「203高地ノート」や「杉元ノート」「アシリパノート」「鶴見ノート」「尾形ノート」を作成したほど原作の大ファンとのことでしたが、本当に大事にそれぞれの描写してたことがよくわかった。

ゴールデンカムイの魅力って、鬼神のごとく人を殺して殺して殺しまくり、死地帰りで内面が大きく変質してしまったのに故郷に帰る場所すらもない杉元が、自然と共に生きるアイヌの少女アシリパさんと出会い「生」そのものを見つめ直すような部分だと思うんですよね。

映像で見ると余計にそのあたりの描写が丁寧に描かれてるな〜と思った。生きるために他の命を狩って、食べて、自分の糧にして、全ての命に感謝し全てを尊重しながら生活に根ざしていく。

戦争で壊れて、心がずっと戦地に置き去りにされ帰ってこない人間たち。杉元だけでなく、鶴見も尾形も月島も谷垣も。皆。

愛憎うずまく人間関係と緻密に張り巡らされた伏線から展開される重厚なストーリー、そして笑いも忘れずコミカルでユーモアたっぷりなキャラクター達。

特に終盤の味噌のエピソードは原作でも重要なシーン(アシリパさん達アイヌにとっては全くの未知の異文化=オソマ、うんこと思ってる味噌を勇気を出して受け入れ、食べる)で、アイヌと和人、お互いの文化を尊重し受容する。それをちゃんと描いてるあたり監督の作品理解度が凄い。元々原作ファンだったスタッフや俳優が多かったとのことで、本当に愛のある実写映画だった。

とにかく全体的に、映画の画面としての見せ方も本当にすごかった。なんといっても、熊がすごい。あれはリアル熊。あんなん遭遇したら即★死を直感するしかない。勝てないよ。勝ったけど。
熊の穴から一部始終を小熊目線で見届ける構図も面白かった…。冷静に熊に語りかけてた人が!

寅次と梅ちゃんの映像エピソード補完も良い…。203高地で、敵の攻撃から幼馴染である杉元を救おうと、はじめて杉元背負い投げした、という部分。寅次にはずっと杉元に勝てないという思いがあっただろうに、あの時初めて寅次が杉元を超えた瞬間だったんだろうな。杉元と昔相思相愛だった梅は、杉元家が病におかされた結果、杉元が故郷を去る形になった。寅次は梅に思いを寄せてたからこそ梅と結婚することになったものの、杉元もまた寅次にとっては大事な友人だったんだよなあ…みたいな深みがあの背負い投げエピソードによって、より感情面の機微が増してたと思う。

また、正直、視聴前は他のキャスティングはびっくりする程ぴったりなわりに、白石役の人はあまり顔似てないな〜と思ってたんですが、動いてみれば細部に至るまでこれはシライシ…と感じる動き満載で爆笑しました。くねくね雪の上滑るやつとか白石すぎて笑うしかない。
「動きが白石」って何!?みたいな感じですが、本当に白石だったんだ…

アシリパさんの幼少時代かわいい、現在も可愛いけども漫画の変顔再現率の高さが異常、杉元は爽やかさの裏にふっと醸し出される闇ぽさなど全ての演技が良い、鶴見中尉はありえないほど本物の狂気が漏れ出る鶴見だった、尾形は全方位尾形で銃剣の構え方からして再現度がすごい、谷垣は素朴可愛い、月島軍曹はびっくりするほどあの「無」の表情が鶴見に忠実な月島ぽい、二階堂兄弟はビジュアル寄せすぎてて1番すごかった、土方は渋い老人はまりすぎ、牛山は乳首がピンクだったし見た目が牛山そのまますぎた

続きがこんなに気になる実写映画も珍しい
三平

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