三平

TAR/ターの三平のネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

めちゃくちゃ面白かった。
栄光、無自覚に振り翳される権威、失墜…自身の理想が徐々に軋轢を生み出し、終盤でまさかの舞台にまさかの…で終わるあのラスト、タイトル見直してああ〜てなる余韻のある映画だった。そう…本当に余韻がすごい。エモーショナル余韻。
出てくる全てが一面的に割り切れないような構図で味わい深。ケイト様かっこ良すぎるのと狂気的な演技がうまい…まさに怪演。

当初男性を主人公にした物語として映画会社から打診があったものの、ケイト・ブランシェットを想定して女性指揮者の話に書き換えたとのことで、これはすごく革新的な判断だったと思う。英断。
今の社会における、権威を持った傲慢な人間の構図が男性から女性に置き換わった時どうなるのか?を描写するのがすごく自然ですごく斬新だった。

正直、自分は性別を男女で分けて「男は○○だからこういうとこがダメ」「女は○○だからこういうとこがダメ」みたいに考えるのがあんまり好きではなくて、人間には等しくだめな部分もある(男だけでなく女も傷つける側になるケースもあるし、性別どうこうでなく「そうさせる社会や権威システムの構造」に起因するのが問題)と思ってるんですが、TARはそういう意味ですごく攻めた映画だった。
世界的な権威を持つ女性指揮者(女性のパートナーもおり養子もいる)が、疑惑をかけられて自己保身、自分の都合のいいように取り繕おうとしたりしながら破滅の道を歩いていく。

しかし、本当にあれは「そう」いうことだったのか?
ター自身は天才的な実力を持ちながら、決して妥協しない真の努力家でもあることが終始徹底して描かれていた。
真実は明らかにされないまま、世間的に「公然」とされた事象が事実として罷り通っていく。すべての場面には、見えている表面と見えない裏側、2つの面があり、その二面性の構造が深みをもたらしている。

ラストの解釈、完全に見た人に任せるスタイルだったんだけど私はあれにほんの少し救済を見たな…衝撃の絵面
三平

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