このレビューはネタバレを含みます
卓越した観察眼により人間のいやなとこがあますことなく描写されており、かといって陰鬱になり過ぎずどこかコミカルなテンポで物語が進むので面白かった。
あの攻防は一周まわってシュール…
「心温まりづらい胸糞ラブストーリー」の表現があてはまりすぎる。ほんとに温まらない
「神様みたいに優しい」田母神がだんだん変わっていく演技がすごい。
与えたものに対して、人はなぜ見返りを求めるのか？身近な人間が成功していくのを間近で見た時人はどうなるのか？
現代のSNSやYouTubeにおける若い世代の承認欲求と肥大していく自我でどんどん行為がエスカレートしていく裏側では、この世は空虚でくだらないとどこかで気づきながらも社会全体が止まれなくなってしまってるような諦観も見えてしまう。
それでも「楽しい」を追求していく、何者かになる、人と違う特別を得たい。
登場人物全員が人間としてひどい部分全開なので、鏡のように突きつけてくる構図が大変よかった。
そしてこの映画の本質は終盤にお互いがお互いの本心を曝け出し泥試合をしながらもお互いに「はじめて互いの本心に理由に気づく」シーンであり、そこが重要なところなんだろうなと思った。
「ほんとはユーチューバーのことバカにしてるんでしょ。分かるよ。私たち、見下されることに敏感だから」
この鋭い言葉を言われ息を呑む田母神は、自分が本当は優里を見下してたことに気づいたのだと思う。優里もまた、田母神の善意を利用し使い捨てにして敬意を払っていなかった自分に気づく。
ラストの展開は、なんともいえないどうしようもないやるせなさと痛みに耐えながら伝えられた「ありがとう」を噛み締める田母神の姿が個人的にとても好き。
ヒメアノ〜ルぶりに吉田恵輔監督とムロツヨシの組み合わせ見れたので満足
