三平

劇場版 きのう何食べた?の三平のレビュー・感想・評価

劇場版 きのう何食べた?(2021年製作の映画)
3.8
毎日がただ流れるように、ゆったりと過ぎていく時間の描き方がすごくリアルで好きな作品。

おせち、アクアパッツァ、ローストビーフ、りんご煮トースト…ぶり大根、どれも生活に根ざして美味しそう…
日々メニューを変えながら考えながら、季節の料理を作る・食べることの大切さが改めて伝わってくる話だよなぁと思う。

なんでもないようにあっさりと、それぞれがお互いの家族と過ごしているように見えて、シロさんは昔母が新興宗教にはまり多額のお金を費やしていたり、ケンジは実父が離婚し生活保護を受けて長く会ってなかったところに孤独死の連絡が入るなど、リアルでもある「親」の描写がさらっと描かれる。これが物語的に過度な演出でなく、本当にごく自然に出てくるのが良い。
ただ毎日生活感あふれる食事をしながらお互いを尊重して生きていく2人が描かれるのはすごい。原作のよしながふみさん作品すべてに共通する、稀有なバランス感がきちんと表現されていてるなーと思った。
その背景があってこそ、几帳面で何かと悩みがちで細かいシロさん・いつも明るく楽天家だけど本当は寂しがり屋なケンジな2人というキャラクターの性格に深みが増して世界観にリアリティが出ている。

原作では50代に突入した2人が対面していく親の老いや不確定な将来、変化していく周囲や少しずつ一歩を進めていくお互いを見つめる時の視線は優しさのようなものが溢れて、隣で日常を送ってる感覚になる映画だった。

壮年期を迎えてる2人だからこその静かに時間が流れるしみじみ感が魅力的な料理と人間ドラマ
三平

三平