三平

オオカミの家の三平のネタバレレビュー・内容・結末

オオカミの家(2018年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

アリ・アスター監督も絶賛したという、5年かけて制作された長回しのストップモーションアニメ作品。とにかく映像表現が秀逸。すごい。

見たことない見た目・味付けに創意工夫されたフルコース料理が時間経緯で変容しつつ、次々に出されるような飽きなさでした。とにかく次に何が来るか起こるのか全く分からない。

そして映画の元になった、実際の事件を知るとそういう話だったのか…と別の鳥肌がたつ、めくるめく悪夢が現実をじわっと侵食してくるような悍ましさも感じた。

◾️アニメーション
立体的な壁(本棚や食べ物、額縁)の上を這うように変化する絵が繰り広げられ、3次元のアニメーションになってるなどその斬新すぎる表現手法には度肝を抜かされまくりました(シュヴァンクマイエル系統好きにはめちゃくちゃどストライクな映画な気がしますし、何かに似てるとも形容出来ないような今まで見たどの映像表現とも違うベクトルだった)。カロリーが高い!!

崩壊と再構築、と定義されたように連続性がある長回しの映像なので途切れることなく展開されるのがまるでキャラクターの視点で見てるような気持ちにもなった。

◾️映画の内容
おそらく事前情報なしに見た場合、よく分からないままふわっとハッピーエンドで終わる寓話風の話に見えてしまってたと思う。しかし「コロニア・ディグニダ」事件の知識を仕入れてから見ると、細部にこだわってモチーフに意味を持たせてたのかな…と思う部分もあり、かなり面白い作品でした。
豚がなぜ人間になるのか?助けた人と助けられた人の相互関係は?助けた人は本当に聖母のような人なのか?髪の色が途中から「黒髪」から「金髪」に変わる意味とは?「オオカミ」とは誰なのか?

支配する側とされる側、外部と遮断された世界で繰り広げられるどこまでが現実で現実じゃないのか境界が曖昧になっていく逃げられないコミューンの恐ろしさの話だった。

◾️監督インタビューについて
仕事の進め方について「絶対的な計画性のなさがあります」と答えてるの、ちょっとふふってなってしまった。「好きな作品を作ろうと考えていた」体現してたんだなぁ

永遠に変化し続ける、という点が現実の世界との地続き感あって、お話は終わったはずなのにまだずっとどこかで永遠に続いてるものもあるんだな…とちょっと怖くなった。
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