実写版ゴールデンカムイは、戦争で人を殺した自分、匂いが分からなくなるほど変質してしまった自分に対する杉元の悲しみがよりクローズアップされているように感じた。
原作で見慣れた「不死身の杉元」は、心優しいごく普通の青年が、地獄のような戦場で傷ついて色んなものを失った、その後の姿なんだということを再確認した。
鬼のような形相で203高地で戦っていた杉元が、一転、北海道の雪山にポツンと立っている。その姿の圧倒的な寂寥感。
だからこそ一連の冒険の後、同じような雪原を杉元が歩いて行った先にアシリパさんがいたこと、2人が相棒として手を取り合うシーンがよけいに美しく尊く感じられた。
アシリパ役の山田杏奈さんは白い衣装も相まって、本当に清らかで雪の妖精みたい。アイヌのコタンも陽射しの差し込むチセに吊るされた食料や民具が平穏と幸福の象徴のようだった。